僕ら夫婦は舞台や映画が好きで、普段から観る機会が多い方だと思うのだが、正月はいつも映画を観ているような気がする。今日は渋谷のアップリンクで遅ばせながら『カメラを止めるな』を観た。映画は21時前から始まるのだけど早く着いたので本を買って小腹を満たそうとしたのに開いている店が少ないからかどこも人でいっぱいで、ようやく入れたのはカフェのようなバーのようなワインが主役のような唐揚げを押しているような店だった。そこで一恵ちゃんは陸軍中野学校について熱く語っていた。映画には市川雷蔵が出ていたはずだと言っていた。確か増村保造が撮っていたものだと思いながら、酔いが回った僕は、明治大学の付属高校で明大中野ってのがあるんだけど、あの学校は陸軍中野学校の血を引いてるんだよ。と適当なことを言った。一恵ちゃんは最初は信じてるようだったけど、授業に諜報学っていうスパイの講座があるんだと調子に乗って続けたら、ばか言ってんじゃないよとすっかり嘘はバレてしまった。
いい感じで酔っ払ったままアップリンクへ行き、映画は始まった。『カメラを止めるな』はみんなが面白いというだけあって、すごく面白いエンタメだった。笑えるし、何より好きなストーリー構成でできている。僕は作品をつくるプロセスを作品にした作品が好きだ。カメ止めはゾンビドラマがまずやってきて、それからそれをつくる背景が描かれて、ドラマをつくってるところがやってくる。ネタがあかされていくような構造なのだが、やっぱり映画をつくる映画は観てて面白い。トリュフォーの『アメリカの夜』という映画が大好きだった。映画をつくってるところを映画にされるとキュンとしてしまうのだ。
カメ止めについては自主映画にしては本当によくできてるし、僕が自主映画をつくっていた時と明らかに違うのは技術だと思った。撮影機材はもちろんのこと、ゾンビ映画にするための特殊メイクや小道具の技術が凄い。自主映画のフィールドでこのクオリティを出せる人材がいるといことが凄いと思った。
そんなことを話しながら家に帰って、また酒を飲み、アップルTVで何かないかと探しているとWの悲劇で手が止まった。僕は観たことがなかった。角川作品であることと薬師丸ひろ子が主演なことは知ってたくらいだ。一恵ちゃんは、これで高木美保が一気に売れたんだよと興奮気味に教えてくれて、主題歌が素晴らしいんだとなんだか悦に入っていた。なんとなしにみ始めた。世良公則が若い。Wの悲劇は舞台の映画だった。若かりし蜷川幸雄が演出家の役で登場する。リアルで起こる物語が役者としての力を引き上げ、舞台で起こる物語を強くする。これも物語の中に物語がある劇中劇、メタ物語の構造だった。メタ物語で好きなのは三谷幸喜の『ラジオの時間』で、カメ止めを見終わった時になんだか似てるところがあるねぇと言っていたのもあって、最後はラジオの時間を観て、今日の映画の一日は終わった。