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【ダイレクトマーケティングの成功事例】DMで街を美しくする

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2019.09.25

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

オークランド市:DMとゴミ袋の工夫で話題を呼び、ゴミの不法投棄を防ぐ

ダイレクトマーケティングとは、アメリカのダイレクトマーケティング協会(DMA)の定義によれば「一つまたは複数の広告メディアを使って、測定可能な反応あるいは取引をどんな場所でも達成することのできる双方向のマーケティングシステム」のこと。

もう少し噛み砕くと、紙やWeb、メール、電話など様々な広告メディアを使い、個別のターゲットと直接的に双方向のコミュニケーションを行うことで、取引を成立させることはもちろん、顧客の反応を測定して次のプロモーションにつなげるようなマーケティングシステムのことを指す。

ダイレクトマーケティングは企業が小売業や卸売業、広告代理店など、中間業者を通さずに見込み客や顧客と直接コミュニケーションが取れるマーケティング活動と評されることもある。さらに、ターゲットの購買行動をはじめとする様々な個人データを企業側で蓄積できるため、より効果的かつ効率的なマーケティング活動に生かすことができる点もメリットだ。

オークランド市:DMとゴミ袋の工夫で話題を呼び、ゴミの不法投棄を防ぐ

ゴミの分別処理は世界中どこでも問題となっており、環境はもちろんのこと、街の景観や治安を損なう要因の一つともなっている。

ニュージーランド最大の都市オークランドにおいてもこの問題は同様で、特に中心部のビジネス街では景観を損ねる大きな原因となっていた。

同市は2011年ラグビーW杯開催に向けて国際都市としてアピールするために、この問題を解決することが喫緊の課題だった。そこで、ハート・オブ・ザ・シティ(オークランド市街のビジネス協会)と共同で改善へ向けたキャンペーンを行うことに決定。主要なターゲットは、オークランド中央ビジネス街の大通りにゴミを出す企業、店舗を構える小売や飲食店である。

キャンペーン活動の目的は、「正しいゴミ処理について啓蒙し自分たちの街に誇りを持つよう促がす」「ゴミの不法投棄は最高25,000ドルの罰金が課せられることを周知する」「飲食店が調理油を林や下水道に捨てないようにする」の3つに設定。キャンペーン名は「Beautify Your City」に決定した。

具体的な施策として、植物の柄をあしらったゴミ袋と正しいゴミ処理に関する教材を封入したDMキット10万枚を送付。そして、「見苦しいホットスポット」 (ゴミが不法投棄されている場所)には苔で出来たキャンペーンロゴと花壇を設置し、メッセージを発信。さらに送られた植物柄のゴミ袋でゴミを街頭に並べると、まるで生垣のように美しく見えるように工夫した。

このようなユニークな方法が話題となり、徐々に人々はゴミ問題に目を向けるように。そして、キャンペーンやゴミ袋が何度かニュースで取り上げられると、自然発生的に勢いが増し、海外のウェブサイトやブログでもこの話題が数多く投稿された。こうなると、街の企業や飲食店はゴミの分別を気にかけざるを得ない。

キャンペーン実施の結果、不法に投棄されたゴミの量は78%も減少。また正しいゴミ処理に関する市への問い合わせが増え、植物柄のゴミ袋を使いたいというリクエストも後が絶えなかったという。

街の美化運動に合わせて行った単純明快な手法でゴミを美しく見せ、ゴミ処理の規則を周知し実績を出した画期的なこのキャンペーン。DMの力によって社会を動かした好例として語り継がれている。

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