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ダイナミック・ケイパビリティ 【dynamic capabilities】

CATEGORY : ブランディング用語集

UPDATE : 2019.06.12

文責 : SINCE.編集部

社会の変化や市況の変化に対して、経営資源を素早く統合・構築・再構築する企業の能力のこと。

ダイナミック・ケイパビリティという考え方は、1997年に「Strategic Management Journal Vol. 18:7」という論文誌に掲載されたデビッド J.ティース教授らによる論文「Dynamic Capabilities and Strategic Management(ダイナミック・ケイパビリティと戦略経営)」によって広く伝えられた。

企業やブランドは、顧客に提供する価値の独自性や優位性を高めることによって市場での地位を高めることができる。しかし、その価値とは永遠に不動のものではなく、社会状況の変化や顧客のニーズの変化、市場の変化など様々な要因によって変動していくものである。

そういった変化に対応していく力、あるいはそういった変化を先読みして対応する力こそが、ダイナミック・ケイパビリティなのだ。

具体的には、「従業員が学び、新しい資産を構築する力」「今ある資産を統合・再構築する力」「価値が低い、あるいは価値がないとされる既存の資産を再利用する力」などが挙げられる。

従業員はビジネスの最前線に立ち、顧客とリアルに接しているケースが多いため、ビジネス環境の変化をいち早く感じ取れる貴重な存在とも言える。その従業員が市況の変化を敏感に学び取り、新しいビジネスチャンスとなる資産を構築することができれば、競合優位性を勝ち得ることが可能となるのだ。

また、写真フィルム産業が衰退していく中で、富士フィルムが写真フィルムの乾燥を抑えるために利用していたコラーゲン技術を用いて化粧品業界に参入したように、今ある資源を再構築する力も目まぐるしく変化する社会を生き抜く上で欠かせない企業の能力である。

そして最後に、もう使えない、価値がないとして企業に眠っている資源が、市況の変化によって再び価値をもたらしたり、そのままでは使えなくても他の資源と組み合わせることで新たな価値を創出する可能性もある。このように、使っていない資源を再利用して使えるようにする力もダイナミック・ケイパビリティのひとつだ。

一言で言えば「適応力」だが、急速な環境の変化にいち早く対応する「スピード」や、複数のものを組み合わせて新しいものを生み出す「編集力」、様々な変化を敏感に察知する「アンテナ」など、求められる能力はいろいろとある。

ダイナミック・ケイパビリティ論はまだ未完成の理論と言われることもあるが、これからの時代を生き抜くための経営戦略論として今注目を集めているトピックのひとつであることは間違いない。

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