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王様と私

CATEGORY : 今日の一筆

UPDATE : 2019.08.01

文責 : 一筆太郎

ケリー・オハラと渡辺謙主演の『王様と私』を渋谷のシアターオーブで観劇した。
 
 
先月、ブロードウェイのアンバサダー劇場で米倉涼子が主演した『CHICAGO』を観たところで、こじんまりとしているのに風格を感じるニューヨークの舞台で堂々と日本人が主演を張っていることに感動していた僕は、渡辺謙自身がなぜ日本人向けに日本で舞台をやるのに英語でやる必要があるのか?と言っていたのと同じ理由で、最初は違和感を感じていた。だけど、それが次第にいかにバカな思いだった知ることになる。
 
 
まず、ケリー・オハラの歌がすごい。彼女はブロードウェイの歌姫と呼ばれ、トニー賞ミュージカル部門の主演女優賞を受賞している。『王様と私』から生まれた名曲Shall we dance?はつい口ずさんでしまうような聞き覚えのある曲だけど、ケリー・オハラの歌声は心が洗われるような美しさで聞き惚れてしまう。


 
もう一つはダンスと演出。『王様と私』は1951年に初演されてから何度も何度もいろいろな演出家の手によって再演されている。その70年近くに及ぶ歴史の中で、ケリー・オハラと渡辺謙が主演し、バートレット・シャーが演出した本作がNo. 1の呼び声が高い。バーレット・シャーはニューヨークのリンカーン・センターシアターでレジデント・ディレクターを務める大人気演出家だ。
 
 
僕は2001年の織部賞で大野一雄さんがグランプリを獲得されて、車椅子に乗りながら踊る様を記録カメラマンとして袖口から見て衝撃を受けてからダンスが好きになって、ピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団が日本に来たときも観に行ったし、マース・カニンガムやイリ・キリアンといった人気コレオグラファーの作品も観てきた。そういう目線で見ると、どうもミュージカルのダンスは物足りなく見えてしまうのだ。大野一雄さんが小指一つで宇宙を動かすと言ったり、土方巽が朝布団から起き上がるまでの動きをつま先からすべての神経を一つ一つ動かすようにやってみたらダンスになると言ったような感覚とは程遠いように見えてしまってがっかりすることが多かった。
 

 
『王様と私』は、ダンス一つひとつはそういったダンサーのものとは違うけど、そんなことを感じさせないくらい演出が素晴らしかった。特に劇中劇のアンクル・トムの小屋が最高だった。ダンスが西洋のものからアジア(タイ?)のものに様式が変わるのだけど、絵巻の一部を再現したような演出があったりして、ダンスがその土地の文化を何よりも物語るのだなと改めて感じされられた。

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