CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)とは、営利目的の企業が社会課題の解決に対応することで、経済的価値と社会的価値の両方にアプローチする方法。マイケル・ポーターらによって提唱され、企業が経済的に成功するための新しい手法として注目されている。
「ネスレ」は、食品業界におけるCSV(共有価値の創造)の世界的なリーディングカンパニーである。
ネスレのCSVへの取り組みは多岐にわたるが、とくにアメリカの社会問題に対する貢献度は大きい。アメリカは「肥満大国」とも「ファーストフード大国」とも言われ、国民の健康状態が大きな社会問題になっている。一部の地域では、ジャンクフードの消費削減を狙った「ジャンクフード税」が課税され、結果的に得た税収を健康産業に活かそうとする動きもあるほどだ。しかし、こうした施策はアメリカの抱えている課題に対する抜本的な解決策にまでは至っていない。こうした中で、企業ができることは何か。その一つが、健康に配慮した商品の開発である。
この社会問題解決に向けて、ネスレは大胆な取り組みを行った。アメリカで販売している冷凍ピザやスナック菓子から人工香料を大幅に削減し、塩分10%カットという商品の品質改良を実行した。健康に配慮した商品は今や一つのブームとさえなっているが、ネスレは他社に先駆けて行い、しかも6ブランド、250品目にものぼる商品に適用したのだ。またチョコレートやキャンディーについても、人工香料や政府によって明記が義務付けられている着色料を使用しないと決定し、達成している。
ネスレのスローガンは、「Good Food,Good Life」。まさにその言葉を体現実行することで、消費者にもネスレのブランドイメージを強く根付かせることに成功した。