法的手続よりも、素晴らしいプロダクトを創ることに時間を費やすと決めた
appear.inは、無料でも誰でも使えるウェブ会議サービス。
2013年に登場すると、その使い勝手の良さから中小企業を中心に爆発的に広まった。特にリモートワークで働く人たちに対する貢献度は計り知れない。
彼らの本拠地はノルウェーのオスロ。通信会社Talenorでの夏のインターンプロジェクトとして始まった後、12箇所に拠点を持つ計25名のチームで運営するようになった。
2019年、appear.inは突如としてその名前をWherebyに変えて、世界中のユーザーたちを驚かせた。
しかし、意外とその背景にある理由は知られていないかもしれない。
実は、appear.inというサービス名は、商標に関するいくつかの問題を抱えていたのだ。
彼らはその問題をクリアしようと勇敢に裁判に挑んでいたが、その壁は想像以上に大きかった。
そして、苦難の末に一つの決断に至る。
「法的な手続きに時間を費やすよりも、ユーザーにとって素晴らしいプロダクトを構築することに時間を使おう」
こうして、appear.inはサービス名を変更するという大胆な選択を取ることにしたのだ。
場所と親密さを表す、シンプルかつグローバルに通用する造語
新しいサービス名を考案するにあたって、彼らが考えた条件は以下のとおり。
・グローバル:ほとんどの国・言語でサービス名を簡単に発音したり書いたりできること
・短い:リンクがサービスの主要な要素になるため、短くてURLとして適切に機能すること
・商標権:ほとんどの国で商標を登録でき、問題になる可能性がないこと
・ドメイン:.comドメインが使えること
・フレンドリー&ポジティブ:サービスのビジョンを具体化した名前であること
これらの条件を全てクリアするものを彼らは必死に考え抜き、導き出された言葉が「Whereby」である。
新しい名前とアイデンティティについて、彼らはこのように語っている。
Wherebyという造語の意味は「何かを行う手段や方法」であり、「ユーザーの共同作業を支援する」という私たちの目標とよくマッチしています。
また、場所を示す「Where」と、親密さを示す「By」という2つの単語で構成されており、短くてシンプル、かつグローバルに通用します(文字通り、私たちの製品は世界中のすべての国と地域で使用されています)。
これは、日常では一般的に使われない言葉であり、ほとんどの人にとっては少し形式的/文学的に感じられるかもしれません。
しかし、それは他にはないユニークさがあり、私たち独自の意味を持たせていけるということでもあります。
ロゴのインスピレーションは、「古き良き紙の本」
新しいロゴの書体は、昔の人たちにとっての大切なコミュニケーションツールであり知識をシェアする手段だった、古き良き紙の本からインスピレーションを受けている。
現代はテクノロジーが飛躍的な進歩を遂げた。その進化に相反するように、いつの時代よりも人間らしいコミュニケーションが求められている。だからこそ、人間らしさ、温度のあるコミュニケーションをロゴで表現したのだ。
フォントはRoslindaleをカスタムしたもので、The Wall Street Journalのフォントデザインを手がけたこともあるDavid Jonathan Rossがデザインした。
好奇心を掻き立てる、“SaaSカンパニーらしくない”イラスト
さらに彼らは、ブランドアイデンティティを表す新しいイラストを発表した。
その背景には、もはや昨今のSaaSカンパニーの潮流である「フラット&シンプル」とは一線を画したアプローチを行いたいという思いがあったそうだ。
芸術的でシュールレアリスムの要素を含んだイラストは、「好奇心で新しい未来への冒険を切り開きたい」という彼らの思想とマッチするもの。
まさにフラット&シンプルとは真逆と言ってもいい、遊び心に富んだ、人間味のある絵。
ワクワクするような仕事の未来を創る、というWherebyの意思が存分に感じられる変革である。