商品やサービスについて独自の優位性を持つポジションを築き、ターゲットとなる顧客の頭の中に差別化されたイメージを植え付ける戦略のこと。簡単に言えば、市場における自社製品(サービス)の立ち位置を戦略的に決めることを指す。
ポジションを決めるということは、消費者の頭の中に入り込むということ。どんなに素晴らしいポジションを見つけたとしても、そのポジションが消費者の頭の中にイメージされない、あるいは、そのポジションを思い浮かべたときに自社の製品やサービスが消費者の頭の中に登場してこなければ意味はない。
どうやって消費者の頭の中に入り込むのか?一番簡単な方法は、そのポジションに一番乗りすることだ。世界で一番最初に月面を歩いたのはニール・アームストロングだが、二番目に月面を歩いた人は?簡単には答えられない。他のブランドに汚されていない未踏の地に入り込むことはポジショニングの常套手段だ。
ただし、最初に未踏の地を開拓することが重要なのではない。最初に消費者の頭の中に入り込むことが重要である。コンピュータを最初に発明したのはスペリーランドだが、消費者の頭の中にコンピュータという商品のポジションを確立したのはIBMだ。アメリカ大陸を最初に発見したのはコロンブスだが、彼は人々にそれを教えなかった。5年後にアメリカ大陸に渡ったアメリゴ・ベスプッチは、新大陸の発見を『新世界』に書き記して世界中に発表した。人々は彼こそが新大陸の発見者と信じて、新大陸を「アメリカ」と名付けた。
業界のリーダーになれないブランドにも、ポジショニングの勝機はある。たとえば、電気製品分野の「小型化」、食品や嗜好品の「高価格」という「業界の穴」を探す手法や、ライバルの穴を見つけてライバルのポジショニングを崩す手法など。
情報社会においては消費者とのコミュニケーションが成功すれば、トップブランドでなくても勝利を手にすることができる。逆に、コミュニケーションに失敗すれば、どんなに優れたブランドだとしてもうまくいかない。消費者とのコミュニケーションを制する手法として、ポジショニングはマーケターの間で重要視されている。