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ロサンゼルスはLAなのにニューヨークはNYと呼ばれないナゾ【イニシャル表記の成功事例】

CATEGORY : ブランディング成功事例

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UPDATE : 2018.10.29

文責 : 松山響

この記事のポイント

LA:音節数の適切な省略でイニシャル表記の定着に成功

IBM:圧倒的な知名度を誇ることでイニシャル表記の定着に成功

IBM、AT&T、GE、3M……世界のトップ企業にはイニシャル表記で親しまれているものも多い。イニシャル表記は長い社名をコンパクトに表現する上でこのうえなく好都合。キャッチーで覚えやすく、書きやすく、発音しやすいという利点もある。一方でイニシャルには、知名度が低い場合に様々なリスクをはらんでおり、同じイニシャル表記が競合した場合の競争も生じる。効果的にイニシャル表記を活用するためには、どんな方法があるのだろうか?

LA:音節数の適切な省略でイニシャル表記の定着に成功

LA(エル・エー)というイニシャルを耳にしたとき、ほとんどの人がロサンゼルスを思い浮かべるだろう。では、NYは?文脈にもよるが、この流れならおそらくニューヨークを指していると考えるはずだ。しかし、ニューヨークのことを「エヌ・ワイ」と呼ぶ人はいない。同じレベルの知名度を有する大都市でありながら、この違いが生まれるのはどうしてだろうか?

アル・ライズとジャック・トラウトによれば、そこには音節数が関係しているという。「ロサンゼルス」は4音節なのに対し、「エル・エー」は2音節と短い。一方、「ニューヨーク」は2音節で「エヌ・ワイ」も2音節。元の言葉と省略表現の音節が同じ場合は、人はイニシャルではなく元の言葉を使うという単純な話である。では4音節のサンフランシスコが「SF(エス・エフ)」と呼ばれないのはなぜか。それは、サンフランシスコに「フリスコ」という素晴らしい2音節の愛称が与えられているからだ。

IBM:圧倒的な知名度を誇ることでイニシャル表記の定着に成功

イニシャル表記を使う上での大前提として、元の言葉が社会的に広く知れ渡っていることが非常に重要である。FDRやJFKは昔からイニシャル表記だったか?いや、最初はフランクリン・デラノ・ルーズベルトであり、ジョン・フィッツジェラルド・ケネディであった。社会全体に浸透するレベルの知名度を得たからこそ、イニシャル表記が通じるようになったのである。

IBMも最初はインターナショナル・ビジネス・マシーンズとしてスタートした。その後、とてつもない成功を収めて圧倒的な知名度を獲得したことで、イニシャル表記が世の中に広まったのである。IBMがイニシャル表記でその名を上げたとき、競合他社のワープロ会社もこぞってイニシャル表記を採用する現象が起きたが、結局どの企業もIBMほどの成功は収められなかった。当たり前のことではあるが、イニシャル表記にしたからといって大きな成功を手にしたり有名になったりするとは限らないのである。

その意味において、イニシャル表記は非常に難易度の高いネーミングと言えるだろう。先述した二人の忠告は一読に値する。

「多くの大企業が自滅行為に走る理由のひとつは、社内メモであまりにもイニシャル表記を見慣れてしまったために、世間でも同じようになじんでいると錯覚してしまうからである。また、IBMやGMなどの成功理由を誤解しているからである」

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