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コカ・コーラのボトルからロゴが消えた日【デ・ブランディングの成功事例】

CATEGORY : ブランディング成功事例

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UPDATE : 2018.11.17

文責 : 松山響

この記事のポイント

ロゴが消え、新しい体験が生まれ、人々は熱狂した

デ・ブランディングとは、あえてブランド名(あるいは親ブランド)を表に出さずに、ロゴやシンボルマークなどでマーケティングを行う戦略のこと。

企業やブランドの色やイメージを消すことにより、消費者との新しいコミュニケーションを再構築することができる。

デ・ブランディングが話題となったきっかけは、2010年代にコカ・コーラが行なったキャンペーンだった。
 

ロゴが消え、新しい体験が生まれ、人々は熱狂した

そのキャンペーンとは、「Share a Coke」というもの。通常コカ・コーラのボトルラベルは、中心に大きくロゴが冠されている。

しかし、このキャンペーンではそのロゴを排除し、代わりに人の名前などを自由に書き込める空欄を作った。2011年にオーストラリアでスタートしたキャンペーンは、瞬く間に話題となり、2013年にはヨーロッパと日本、2014年にはアメリカ、2015年にはアジアに展開され、全世界で記録的な成功を収める。

特にアメリカでは約10年間下降していた売上を、わずか12週間で金額にして2.5%も増加させた。
 

このキャンペーンが盛り上がったフィールドはSNSである。

人の名前やメッセージを書き込む、という非常に手軽な方法ながら、コカ・コーラのボトルは一気にパーソナライズされたものとなる。

それがSNSを通じて拡散され、次々とオリジナルなボトルを作る人が続出。プロポーズの言葉をボトルで作って話題になったケースもあれば、

イギリスではロイヤルベビーの誕生に合わせて「Share a Coke with Wills and Kate」というサインが掲示されてこれも大きな話題を呼んだ。

コカ・コーラのロゴが入ったボトルは、私たちにとってはコカ・コーラのボトルに過ぎない。

しかし、ロゴをなくして空欄にするだけで、私たちに新しい体験をもたらした。

そういう意味では、キャンペーンに乗っかった人たちは、コカ・コーラ自体にお金を払ったというよりは、体験価値にお金を払ったのだといえる。
 
 
この事例のポイントは、ブランド名の露出は抑えたが、ブランド自体の影響力は消えていないということ。仮に、無名の飲料メーカーが空欄のあるボトルを販売したところで、コカ・コーラと同じようにヒットしただろうか?

「コカ・コーラのボトルにメッセージを入れられる」ことが価値であり、むしろコカ・コーラの強いブランド力によって成り立つキャンペーンではないだろうか。
 

このように、デ・ブランディングは既に消費者の認知度や信頼感を得ているブランドが、新しい価値を模索する際に有効な手段だといえるのだ。

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