ダイレクトマーケティングは、アメリカのダイレクトマーケティング協会(DMA)の定義によれば「一つまたは複数の広告メディアを使って、測定可能な反応あるいは取引をどんな場所でも達成することのできる双方向のマーケティングシステム」のこと。
もう少し噛み砕くと、紙やWeb、メール、電話など様々な広告メディアを使い、個別のターゲットと直接的に双方向のコミュニケーションを行うことで、取引を成立させることはもちろん、顧客の反応を測定して次のプロモーションにつなげるようなマーケティングシステムのことを指す。
ダイレクトマーケティングは企業が小売業や卸売業、広告代理店など、中間業者を通さずに見込み客や顧客と直接コミュニケーションが取れるマーケティング活動と評されることもある。さらに、ターゲットの購買行動をはじめとする様々な個人データを企業側で蓄積できるため、より効果的かつ効率的なマーケティング活動に生かすことができる点もメリットだ。
費用対効果が高く、効果検証がしやすい、PDCAサイクルを回しやすいといった利点がある反面、軌道に乗るまで時間を要するケースや、反応の良い広告がすぐに劣化するケースもあるため、最適なプランを導き出すための試行錯誤や定期的な効果検証が成功の鍵を握るマーケティング活動と言えるだろう。
ネスレジャパン:広めるほどお得でファンになるアンバサダー制度で成功
ネスレジャパンの「ネスカフェアンバサダー」はマーケティング成功例として語られることが多いが、ヒットの裏にはダイレクトマーケティングが大きく寄与している。
ネスカフェアンバサダー制度は、オフィスで淹れたての本格的なコーヒーが飲めるマシンを無料でレンタルできるサービス。1人以上の会社であればOKで、月1500円でコーヒーが50杯以上飲める環境を提供してくれる。缶コーヒー一杯100円程度なので、このコーヒーマシン1台あることで節約にもつながる。
まず大きなポイントはコーヒーマシンを無料でレンタル出来る点。「無料」はいつの時代も大きなチカラを持った言葉といえる。この無料でコーヒーマシンを貸し出すことで、一番最初のハードルを下げ、とりあえず使って貰い定期購入に繋げているのだ。
そして、ネスレジャパンが大成功を収めた要因は、コーヒーマシンの無料配布よりも紹介制度にあるとされている。ネスカフェアンバサダーに登録し、知人友人に紹介して行く事で、豪華な商品が貰えるという、紹介キャンペーンを実施。発行された専用のURLをアンバサダーが知り合いや家族にSNSなどで発信することで、ネスカフェの良さを紹介していくのだ。
ダイレクトマーケティングに欠かせないリレーションシップ(顧客との関係性)を見事に構築することで、ネスカフェの輪はどんどん広がっていき、アンバサダー活動を通してネスカフェのファンもどんどん増えていった。
今でこそ消費者にアンバサダーとして動いてもらうマーケティング活動は「アンバサダー・マーケティング」と称されるほどメジャーになったが、その先駆けとなったのがまさしくネスカフェアンバサダーの取り組みだったのである。