ダイレクトマーケティングとは、アメリカのダイレクトマーケティング協会(DMA)の定義によれば「一つまたは複数の広告メディアを使って、測定可能な反応あるいは取引をどんな場所でも達成することのできる双方向のマーケティングシステム」のこと。
もう少し噛み砕くと、紙やWeb、メール、電話など様々な広告メディアを使い、個別のターゲットと直接的に双方向のコミュニケーションを行うことで、取引を成立させることはもちろん、顧客の反応を測定して次のプロモーションにつなげるようなマーケティングシステムのことを指す。
ダイレクトマーケティングは企業が小売業や卸売業、広告代理店など、中間業者を通さずに見込み客や顧客と直接コミュニケーションが取れるマーケティング活動と評されることもある。さらに、ターゲットの購買行動をはじめとする様々な個人データを企業側で蓄積できるため、より効果的かつ効率的なマーケティング活動に生かすことができる点もメリットだ。
ルノー:ファミリーカーの購買に大きな影響力を持つ子どもをターゲットにしたDMで成功
フランスのパリに拠点を置き、日産自動車のグループでもあるルノー。
彼らは人気ファミリーカーの「セニック」の販売を強化するにあたり、様々な調査を行った。すると、子どもの73%が親の購入決定に影響を与えていることが判明。セニック(Scenic)を紹介する上で、親だけでなく子どもにリーチすることが重要であると考えた。
子どもと親の両者に車の最新機能を同時に理解してもらうには、どうすればよいだろうか。ルノーが出した答えは、それぞれの言葉を用いて、コミュニケーションを取るというものであった。そのために、2種類の言葉表現を使えるチャネルを選択し、伝えたいことの統一感を作り出すことにした。
セニックは、座席後方部分が子どもたちのテリトリーであり、遊び、歌を歌い、眠り、夢を見る場所である。このことをターゲットとなる家族(親と子ども)にしっかりと理解してもらう必要があった。
まず彼らが行なったのは、教育心理学者による数回のワークショップ。新型パノラマルーフ、ドライビ ングモード選択、オプションなどの特長を子どもたちに教えた。すると、子どもたちは自分の言葉とスケッチで新型ファミリーカーを表現することができるようになった。
こうした研究を踏まえたうえで行なった施策は、ターゲットとした57,000世帯へのダイレクトマーケティング。親向けには車の専門家が制作したカタログを、そして子ども向けには、子どもが制作した専用カタログを用いた。さらに、カタログからウェブサイトに誘導し、ゲームを楽しみ、子ども向けのワークショップを体験できるようにした。
結果として、1ヶ月で120台の販売に成功。多くのメディアでも取り上げられたことにより、閲覧数は680万件にも及び、想定ターゲットの範囲を超えて多くの人々にセニックとルノーの名が知られることになったのだ。