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人と犬の情緒的なつながりが里親を増やす【ダイレクトマーケティングの成功事例(17)】

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2019.01.28

文責 : 松山響

この記事のポイント

マーズニュージーランド:顔認証を用いた人と犬のマッチングサービスで里親探しが活性化

ダイレクトマーケティングとは、アメリカのダイレクトマーケティング協会(DMA)の定義によれば「一つまたは複数の広告メディアを使って、測定可能な反応あるいは取引をどんな場所でも達成することのできる双方向のマーケティングシステム」のこと。

もう少し噛み砕くと、紙やWeb、メール、電話など様々な広告メディアを使い、個別のターゲットと直接的に双方向のコミュニケーションを行うことで、取引を成立させることはもちろん、顧客の反応を測定して次のプロモーションにつなげるようなマーケティングシステムのことを指す。

ダイレクトマーケティングは企業が小売業や卸売業、広告代理店など、中間業者を通さずに見込み客や顧客と直接コミュニケーションが取れるマーケティング活動と評されることもある。さらに、ターゲットの購買行動をはじめとする様々な個人データを企業側で蓄積できるため、より効果的かつ効率的なマーケティング活動に生かすことができる点もメリットだ。

マーズニュージーランド:顔認証を用いた人と犬のマッチングサービスで里親探しが活性化

マーズニュージーランド社のペディグリーといえば、日本でも広く知られているペットフード。同社はブランドのミッションの一つに「犬に優しい世界」を打ち建てており、そのための活動として里親探し運動を行なっている。これは捨てられた犬の悲惨な状況を国民に認知をしてもらうための活動であった。だが、里親探しは他でも行われている活動であり、その成果というのはそれぞれの判断基準に委ねられる。そのため、成功と呼べるキャンペーンが実現されていない状況だった。

通常は寄付金を募ることが主体であったが、同社はNECと協業して、テクノロジーによってこの状況を打破することを試みた。

犬をペットとして飼いたい。そのような人は多くいる。しかし、保護施設に収容された犬を対象にしているかというと、そうでないケースが多いのが実情だ。保護施設に収容された犬は、決して犬に問題があるわけではない。このキャンペーンで重要なインサイトとは、人とそのような犬との間に絆を作り上げることだった。

ペディグリー社のこのキャンペーンは、商品を買ってもらうことが第一の目的ではない。まずは、飼い主がいない犬が困窮している姿を人々に知ってもらい、飼い主になってもらうことだ。次に、どうしても飼うことができないのであれば、募金をしてもらうこと。ペディグリーの商品を購入というのは優先順位としては3番目であった。

同社はこれまでの活動を振り返り、コミュニケーション戦略において欠けているものを発見いSた。それは、人と犬の情緒的なつながりだ。調査や研究によると、幸せな状態にいる犬とその飼い主には共通の性格と外見的にも似てくるという傾向があるようだ。

そこで、キャンペーン動画では、一般の飼い主に加え有名人も登場し、特徴の類似を強調したシーンを登場させた。

そして、キャンペーンの目玉となったのが、世界でもトップレベルの技術を誇るNECが開発した顔認証ソフトウェアを用いたサービス「ドッグルゲンガー」だ。本来は、テロ防止や水際での食い止めなど犯罪を防止するための認証技術であったが、これで人と犬の外見上の共通点を探し出し、飼い主となってくれる人とのマッチングを行ったのだ。

操作は簡単。ドッグルゲンガーのウェブサイト上に自分の顔写真をアップロードするだけだ。すると、目、鼻、口など顔の各部が分析され自分の分身とも言える犬が収容施設内のデータベースからピックアップされて画面上に映し出される。その犬を見て、是非会いに行きたいと思えば、オンライン上で双方の詳細をやり取りし、会いに行く日時を申し込むことができる仕組みだ。

このキャンペーンの効果は、まずは何と言ってもサイト訪問数が飛躍的に伸びたことであった。また、ソーシャルメディアで盛んにシェアされ、他国でも同じように犬の里親探しが始まったのだ。ニュージーランド国内にある犬の収容施設との提携は、人と犬を結び付ける上での重要な役割を担い、実際に犬に会いに来るという最終的な行動に結びつけることができた。

このように、テレビでキャンペーンを行うだけでは到底達し得ない結果をもたらしたのが、ペディグリーによる犬の里親探し「ドッグルゲンガー」であった。

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