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優秀な学者なら両面コピーも朝飯前か?【ビジネス・エスノグラフィの成功事例】

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2019.02.24

文責 : 松山響

この記事のポイント

PARC:ビデオ観察で優秀な学者もコピー機を使いこなせないことを発見

ビジネス・エスノグラフィとは、民族誌学的アプローチをビジネスやマーケティング活動に生かした調査手法のこと。主にユーザー調査において、定量アンケートなどの手法で顕在化したニーズや情報を探る調査とは異なり、デプスインタビュー、ユーザビリティテスト、観察調査などの手法を使って、ユーザーの潜在的なニーズを探る調査のことを指す。

「エスノグラフィ」は、文化人類学や社会人類学における研究・調査手法であり、特定のコミュニティにフィールドワークとして参加し、そのコミュニティ内の人々の行動様式を観察・記述していくことで、価値観やコミュニティ構造をあぶり出していくものである。

こうした学術的アプローチを、ビジネスやマーケティングなどの課題解決に応用したところ、様々なイノベーションや成功事例が生まれたことから、近年はビジネスメソッドとして注目を浴びるようになっている。

PARC:ビデオ観察で優秀な学者もコピー機を使いこなせないことを発見

商品開発にエスノグラフィの手法を取り入れた先駆けとして有名なのが、ゼロックス子会社のPARC(Palo Alto Research Center)である。

同社に研究員として入社した文化人類学者のルーシー・サッチマン(Lucy Suchman)は、エスノグラフィのアプローチで製品開発に役立てないかを検証した。すなわち、コピー機のユーザーが実際にどのように使っているのかを延々とビデオ撮影し、それを観察することでコピー機の改善点を洗い出す手法を試したのである。

すると、博士号を二つも保有するような優秀なPARC研究者が、ゼロックスの複写機で両面コピーを行うのに四苦八苦している様子を観察により発見した。その他も、多くの優秀な研究者が両面コピーの機能を使いこなせていなかったのである。

こうした事実から、コピー機の様々な機能を使いこなせないのは消費者のリテラシーの問題ではなく、技術の役立て方やインタラクションにあることを発見し、その後、同社のコピー機には両面コピーを促す緑色のスタートボタンが搭載されるようになった。

以後、同社のプロジェクトで新製品を生み出す際は、技術者だけでなく社会学者やデザイナーを早い段階で参加させるようにし、ほとんどのプロジェクトにおいてエスノグラフィの手法が取り入れられるようになったそうだ。

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