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「逆さケチャップボトル」誕生秘話【ビジネス・エスノグラフィの成功事例(2)】

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2019.02.24

文責 : 松山響

この記事のポイント

HEINZ:消費者の日常生活に密着し、既存のケチャップの不便さを発見

ビジネス・エスノグラフィとは、民族誌学的アプローチをビジネスやマーケティング活動に生かした調査手法のこと。主にユーザー調査において、定量アンケートなどの手法で顕在化したニーズや情報を探る調査とは異なり、デプスインタビュー、ユーザビリティテスト、観察調査などの手法を使って、ユーザーの潜在的なニーズを探る調査のことを指す。

「エスノグラフィ」は、文化人類学や社会人類学における研究・調査手法であり、特定のコミュニティにフィールドワークとして参加し、そのコミュニティ内の人々の行動様式を観察・記述していくことで、価値観やコミュニティ構造をあぶり出していくものである。

こうした学術的アプローチを、ビジネスやマーケティングなどの課題解決に応用したところ、様々なイノベーションや成功事例が生まれたことから、近年はビジネスメソッドとして注目を浴びるようになっている。

HEINZ:消費者の日常生活に密着し、既存のケチャップの不便さを発見する

創業150年の世界的な誰食料品ブランド「Heinz(ハインツ)」。同社は2000年代前半に、記録的な売上低迷に陥っていた。

その立て直し策として、彼らは主力商品であるケチャップのボトル入り商品を開発することにした。ボトルは創業間もない頃に販売していたが、その後は卓上瓶入りが主流となっており、どのようなボトルにするかがこのプロジェクトの最大の要点であった。

同社は新たにマーケティングチームを結成し、そこには社会学者も含まれていた。そして、消費者の自宅を訪問して、日常生活に密着するエスノグラフィ調査を実施した。

すると、多くの家庭で残り少なくなった瓶入りケチャップを逆さにし、底を叩いてケチャップを出す行為が見られた。その動きは非効率的であり、勢い余ってケチャップが出過ぎてしまうなど、消費者もその状況を快適には思っていないように見受けられた。特にハインツのケチャップは濃厚でドロドロしているため、残りが少なくなるにつれて使いにくくなるのであった。これはボトル入りのケチャップでも同じであり、多くの消費者がケチャップを逆さにして冷蔵庫に保管していることに気づいたのだ。

こうした調査から得られた結果を持ち帰り、開発チームと新しいボトルの形状を吟味。そして生まれたのが、キャップを逆さにしたプラスチック製のボトルである。

逆さまでも立てられるようにキャップを大きくし、逆さの状態でラベルが読めるように、全てを逆さにした。

斬新ながら利便性に優れた新ボトルはすぐさま話題となり、たったの3か月で純利益が17%以上も増加。ハインツのケチャップの新たなアイコンとなった。今もなお、ハインツのケチャップやマスタードといえば逆さボトルであり、ケチャップの世界的なトップブランドとして君臨し続けている。

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