「Apple」は、言わずと知れたインターネット関連製品やデジタル電化製品、関連ソフトウェアの開発会社である。1976年にスティーブ・ジョブズとスティーブ・ウォズニアックによって設立され、MacやiPhoneといった革命的プロダクトを生み出し、今や機能性やデザイン性に優れた製品の豊富なラインナップを誇っている。
Appleのブランド・アイデンティティは「テクノロジーによって人々の生活を変える」である。創業者のスティーブ・ジョブズによって掲げられたもので、Appleは製品を宣伝するときにこれをあらゆる手法で消費者に伝えている。
こうした宣伝活動の代表的な例として挙げられるのが、1997年に公開された伝説的なテレビCM「Think Different.」だろう。スティーブ・ジョブズが世界を変えた偉人について語るだけという、これまでにない斬新なCM。その偉人達に企業イメージを重ね、「自分達の生み出す製品は世界を変えられると信じて、常識にとらわれずに努力した結果でき上がった製品である」と伝えた。これこそがAppleのブランド・アイデンティティを象徴するものであり、実際にこのCMに心を動かされた多くの消費者がApple製品を購入した。
いかにその製品が素晴らしいかをアピールする内容になるのが、従来のCMである。しかし、このように製品そのものの特徴をアピールせずとも、ブランド・アイデンティティを伝えることで消費者の購買意欲を駆り立てることは可能だという好例だろう。
また、魅力的なブランド・アイデンティティは、人材を引き寄せる力も持つ。スティーブ・ジョブズは、ペプシコーラのマーケティング部門のトップにいた人物にAppleのブランド・アイデンティティが示す生き方を伝えることで、ヘッドハンティングに成功している。
Appleはこうして優秀な人材を集めながら、斬新な製品やサービスを次々とリリースしてきた。まさしくブランド・アイデンティティのとおりに、人々の生活を変えたのだ。ブランド戦略において、いかに魅力的なブランド・アイデンティティを掲げるかがブランド戦略の成功に重要な意味を持つことは言うまでもない。