あえてブランド名(あるいは親ブランド)を使わずに、ロゴやシンボルなどでマーケティングを行う戦略のこと。
企業やブランドが持っている色やイメージを消すことで新しいイメージやポジションを作り出す狙いもあれば、ブランド認知が確立されたことでブランド名を使わずとも消費者への露出が可能となることからデ・ブランディングが行われる場合もある。
コカ・コーラは、2011年にオーストラリアで「Share a Coke」というキャンペーンを実施。通常ロゴが印刷されているボトルのラベルの中心部分に、購入者が自分の好きなワードを書き込める「ネームボトル」を発売し、大成功をおさめた。購入者は、ボトルに人の名前や好きな言葉などを思い思いに書き込み、中には、このボトルを活用してプロポーズに成功した消費者も。そして、それらの画像はソーシャルメディア上で拡散され、たちまち話題になった。
このキャンペーンは、2013年にはイギリスなどの欧州と日本で、2014年にはアメリカ、2015年にはタイなどのアジア圏でも形を変えながら展開。イギリスでキャンペーンが行われた時期には、ロイヤルベビー誕生のニュースがあった。ピカデリーサーカスで「Share a Coke with Wills and Kate」というデジタルサインが掲示され、祝賀ムードの盛り上げに一役買ったというエピソードもある。
このキャンペーンによる販促効果は、明らかだった。アメリカでは、キャンペーンが行われた2014年の8月までの12週間の売上金額が2.5%も増加している。それまで11年間の長きに亘って下降し続けていた売上げを、一気に上昇させたのだ。
日本においては、「Share a Coke and a Song」という音楽キャンペーンとして展開された。1957年から2013年までの各年の西暦が記載された「イヤーボトル」を購入すると、その年にヒットした曲など10曲で構成されたコカ・コーラオリジナルのプレイリストが貰えるという特典付きのもの。定額制音楽サービスのストリーミング機能を利用してダウンロードできるという点も、その1部をFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを通して友人と共有できるという点も画期的だった。
こうして、コカ・コーラはロゴからブランド名を消したデ・ブランディングによって消費者間のコミュニケーションを喚起し、購買意欲に繋げることに成功。これはコカ・コーラという商品をパーソナライズすることで、消費者により強い親近感を持たせる戦略だが、コカ・コーラの持つブランド力があってこその成功例であるとも言えるだろう。