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【ダイナミック・ケイパビリティの成功事例】IKEAのイノベーションを支える圧倒的な柔軟性

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2020.02.14

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

イケアは顧客の評判に合わせて、取り扱い商品を家具に絞り込んだ

価格競争を避けるために生まれた、家具を顧客に組み立てさせるアイデア

入荷が追いつかなくなり、倉庫自体を店舗に変えた

「ダイナミック・ケイパビリティ」とは、社会の変化や市況の変化に対して、経営資源を素早く統合・構築・再構築する企業の能力のこと。

企業やブランドは、顧客に提供する価値の独自性や優位性を高めることによって市場での地位を高めることができる。しかし、その価値とは永遠に不動のものではなく、社会状況の変化や顧客のニーズの変化、市場の変化など様々な要因によって変動していくものである。

そういった変化に対応していく力、あるいはそういった変化を先読みして対応する力こそが、ダイナミック・ケイパビリティなのだ。

では、具体的にどのようにビジネスの発展に寄与するのだろうか。成功事例を見てみよう。

今や世界最大の家具販売会社に成長した「イケア」は、1943年にスウェーデンのイングバル・カンプラードという17歳の少年が設立した通信販売会社だった。イケアでは当初は家具を取り扱っていなかったが、やがて取り扱うようになると顧客から評判が高かったため、商品を家具に絞り込んだという経緯がある。

競合との価格競争が激しくなると家具の価格を下げざるを得ないが、そうすれば質が低下することは避けられない。創業者のカンプラードは、いかにして家具の質を落とさずに価格を抑えるかを考え、組み立て前のパーツの状態で家具を販売し、顧客が購入後に組立てをするスタイルを導入した。こうして製造過程における人件費の削減を図り、価格に反映させる努力をしたのである。この判断により、家具を組立前のフラットな状態で輸送することになったため、結果的に輸送コストの削減にも成功した。

こうした対応が功を奏して、イケアは成長していった。しかし、しばらくして同業他社との兼ね合いから商品の仕入れがままならないという事態に陥ることになる。ここでも、イケアは商品の完全自社生産に乗り出すという大胆な対応を取った。東欧の家具業者を採用して商品を社内製造するようになり、郊外に大型店舗を設けるようになったのにはこうしたきっかけがあったのだ。

さらに、当初は従業員が倉庫に家具を取りに行っていたが、そのうちに対応が間に合わなくなった。すると、今度は客が自分で倉庫に商品を取りに行く形に。これが、現在の店舗の原形だ。

イケアがこうして成長してこられた理由は、変化を生み出す能力「ダイナミック・ケイパビリティ」が高かったからである。創業者のビジョンや価値観を軸にしながらも柔軟に変化し続けてきたことが、イケアを強くした。近年、イケアを真似ていると思われる企業はあるが、イケアほどに成功している企業は見当たらない。商品デザインや店舗レイアウトは真似できても、その軸となるビジョンや価値観を真似ることはできないからであろう。

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