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【コンシューマーインサイトの成功事例】オムツの価値は、赤ちゃんが気持ちよく眠れるかどうか

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2019.09.18

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

オムツ業界の機能性を牽引してきたP&G

母親へのインサイト調査で、求められている本当の価値に気づく

赤ちゃんを主語にしたキャッチコピーやサービスで成功

誰もが知る赤ちゃん用紙おむつ「パンパース」が、日本で発売されたのは1977年のことだった。当時は布おむつが一般的で、紙おむつは日常的に使われるものではなかったが、「世界中のお客様の暮らしをよりよいものにする」というビジョンを掲げるP&Gは、海外で売上げが好調だった赤ちゃん用紙おむつで、日本の赤ちゃんを持つ母親を毎日のおむつの洗濯から解放した。

15億円規模だった日本の紙おむつ市場は、パンパースの発売からわずか2年で100億円を超えるまでになった。機能性が高く価格がリーズナブルな紙おむつの登場は「育児革命」とさえ言われ、パンパースは、一時期この市場の9割を占めたのだ。

パンパースがその品質において、常にトップレベルを保ってきたことは言うまでもない。紙おむつに求められる吸水力やフィット性、通気性、肌触りのよさなどの機能性は、常にニーズに合わせて進化してきた。テープ式ベルトやおむつの中を弱酸性に保つphコントロール機能、穴あきメッシュシートなどはパンパースが開発した技術だ。

しかし、パンパースが取り組んできたのは商品開発だけではない。世界中の母親たちにインサイト調査を行い、「紙おむつを選ぶにあたって、何を最も重要視しているか」を徹底的に探っていく。その調査は単純なインタビューだけでなく、心理学者を交えた深層心理の解明にまで及んだ。

その結果、彼女たちが紙おむつに求めている本当の価値とは、「赤ちゃんが気持ちよく眠れること」であることに行き着く。どんなにすごい技術力や機能性があっても、あくまでも「赤ちゃんが気持ちよく眠れる」という目的を達成するものでないと意味がないのだ
。主役はあくまでも赤ちゃんであり、パンパースの技術力の高さを誇示してもしょうがない。こうして彼らが新たに提案した「赤ちゃんのアイデアに基づき、パンパースが作りました」というキャッチコピーは、大いに母親たちの共感を呼んだ。

パンパースは「すべての赤ちゃんの明るく健やかな成長に貢献する」というビジョンに基づき、子育てやベビーケアに関する情報を発信するウェブサイトを運営している。常に赤ちゃんを主語に捉え、何が必要とされているかを考える姿勢こそが、パンパースを紙おむつブランドとしての不動の地位を築き上げたのである。

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