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データ分析の先駆者は大阪ガス?
便利屋が最強の分析チームになるまで

CATEGORY : ブランディング成功事例

UPDATE : 2020.06.01

文責 : SINCE.編集部

この記事のポイント

1990年代、いち早くデータ分析に着手する

社内の便利屋仕事から、地道にデータ分析力を研鑚

分析屋からビジネスパートナーへ

ビッグデータとコールセンターを連携

1990年代、いち早くデータ分析に着手する

データ分析やデータマーケティングは、今では多くの企業に取り入れられ、「ビッグデータ」や「データサイエンティスト」といった言葉も世の中に浸透しつつあります。

しかし、まだそのような派手な言葉もなく、データ分析に注目している人も少ない90年代に、いち早くデータ分析と向き合い、並々ならぬ努力を続けてきた企業が日本にあります。
 
 
その名も、大阪ガス株式会社です。
 
 
意外な名前に驚いた方もいるかもしれません。大阪ガスはいうまでもなくGoogleやAppleのような先進的なIT企業ではなく、関西圏で親しまれている一般的なガス会社ですから。

しかし、同社は90年代後半からデータ分析専門チームを立ち上げ、試行錯誤しながらデータと向き合ってきました。
 
 
そして、時代が彼らに追いつく2010年代ごろから大阪ガスの取り組みは徐々に注目されるようになり、今ではデータ分析に詳しい人たちの間では伝説の企業として知られています


 
 
 

社内の便利屋仕事から、地道にデータ分析力を研鑚

現在はビジネスアナリシスセンターという名称で運営されているデータ分析専門チームは1990年代後半、大阪ガスの研究所内で2〜3人のメンバーによって立ち上げられました。

当時のテーマはガス販売量の変動要因分析や将来予測。統計解析を独学で学び、実データと悪戦苦闘しながら少しずつ分析力を高めていったそうです。
 
 
その後、一定の成果が出せるようになると、次は機器の運転データ分析や省エネルギー分析、エリアマーケティングなど様々な分野へ応用しようと試行錯誤します。

そして、あらゆる部署へと提案を持って行っては、門前払いされたりもしながら、少しずつ大阪ガスにおけるデータ分析請負人のポジションを確立していきます。
 
 
まだ世の中的にデータマーケティングが浸透しておらず、データ分析に興味を持つ人間も僅かだった時代。共感して業務に取り入れてくれる人は少なく、また自分たち自身も手探り状態でした。そこで、誰でもできる簡単なデータ処理を代行する社内の便利屋のような仕事も請負いながら、データ分析の機会を増やしていき、日々奮闘しながら徐々にノウハウを蓄積していったのです。
 
 
2000年代にはビジネスに貢献する分析の専門チームを目指そうと、名称をビジネスアナリシスセンターと命名。ただのデータアナリストではなく、ビジネス課題を解決するデータアナリストになろうとチームメンバーで誓ったそうです。
 
大阪ガス公式サイト:ビジネスアナリシスセンターの紹介 
 
 

分析屋からビジネスパートナーへ

2010年代前半、ついに時代が彼らに追いつきました。
 
 
ビッグデータという言葉がメディアで連日のように叫ばれるようになると、大阪ガスはその先駆者的存在として俄かに注目を集めるようになります。

2013年には所長の河本薫さんが『会社を変える分析の力』を出版。講演や取材の依頼も増え、同時に社内での知名度も飛躍的にアップしました。


 
 
その頃から「こんなデータ分析ができないか」という社内からの依頼内容から、「こんな業務課題をデータ分析で解決できないか」という依頼内容に変わっていったそうです。

つまり、単なるビジネスアナリシスセンターの人たちを見る目が、データ分析者から「ビジネスパートナー」へと変わったということ。彼らはITやデータをビジネス課題を解決する手段として活用していくようになります。
 
 
 

ビッグデータとコールセンターを連携

大阪ガスのビジネスアナリシスセンターはこれまでに様々なビジネス課題解決に貢献してきましたが、その中からひとつ紹介したいのが、コールセンターとビッグデータの連携による業務効率化です。

同社では長年にわたって顧客のガス設備の稼働データを蓄積してきました。家庭用であれば、契約住戸のガス給湯器の使用年数や毎日のガス使用量、よく使う時間帯など、ありとあらゆる情報をデータ化しています。

さらに、これらのデータを独自分析することで、顧客にどのような故障が起きるかを予測できるようになりました。
 
 
顧客からコールセンターに連絡が入ると、その顧客が使用している機器の状況や電話でのやりとり、そして過去数百万件の修理履歴や機器の型番などをもとに、故障の原因となっている可能性が高い順に5つほど部品が自動抽出されるシステムを構築。

修理担当者はこれらの部品を修理できる準備をして現場に向かうため、一度の訪問で修理を済ませられるケースが増加することに。これは修理作業員の業務効率改善に繋がることはもちろん、顧客の満足度にも大きく貢献しました。
 
 
そのほかにも、販売データを活用してガス機器の展示会開催地を決めたり、交通渋滞データを活用してトラブル対応用の緊急車両の配置を変えるなど、様々なデータを様々なビジネス課題解決に生かしています。
 
 
社内の便利屋から最強の分析チームへと成長を遂げた大阪ガスのビジネスアナリシスセンター。

こうした功績が認められ、2015年に企業情報化協会から「IT総合賞」を受賞、情報化促進貢献個人等表彰では「経済産業大臣賞」を受賞。河本所長は日経PBが主催する「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」初代受賞者となりました。

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