消費の低迷や業界の成熟化が続くと、必ずと言っていいほど低価格志向の商品やサービスが台頭する。
特に食品や飲料の場合は店頭での価格競争に陥りやすい。しかし、低価格商品はその場しのぎに終始することが多く、総需要が拡大するとは限らない。
こうした状況でブランドが打つべき施策は、価格以外の要素で支持される商品を生み出すことだ。
ハウス食品:「飲酒シーン」という
カレーや香辛料のノウハウが市場を発見
2000年代初頭BSE問題や産地偽造問題が相次ぎ、逆風が吹いていた食品業界。メーカーはデフレ経済下でも高く売れる商品の開発に躍起になっていた。
ハウス食品もそのうちの一つ。同社はカレーや調味料の分野ノウハウを持ち、特に加工技術やマスキング技術において業界優位性を築いていた同社。この財産を生かしたサブブランドの構築を模索していた。
そこで着目したのが、ウコンだ。当時、すでにウコンは「お酒を飲んだときに効果的」というイメージが定着していた。
そして、ウコンはカレーや調味料で培った強みを存分に発揮できる分野。
彼らはウコンを使って飲酒シーンに限定した商品を作ることに決めた。
同社は消費行動の調査を行い、「飲酒機会が多い」「加齢とともにアルコールに弱くなっている」「健康ドリンクを日常的に飲用する」といった特徴を持つ30〜40代男性にコアターゲットを設定。
これにより、サプリではなく栄養ドリンクのような形状と味が採用され、ウコンがアルコール代謝に及ぼす影響の科学的根拠も研究して学会に発表する。
こうして生まれた新商品が、「ウコンの力」。「飲む前に、飲む」という限定的な利用シーンが見事にヒットし、飲酒機会が生じるたびに購入されるという継続利用につながる。
これまでは一般用薬品胃腸薬のひとり勝ちだった「二日酔い対策の市場」に強烈なインパクトをもたらして新規参入することに成功したのだ。
その後、同社は「カシスオレンジ味」や「ウコンの力 スーパー」といった新商品により利用層の拡大と需要喚起を展開。
特に、「ウコンの力 スーパー」は効果感を求めるリピーター層にヒットし、ウコンの力シリーズの3割を占める売上を持つように。「価格以外の要素で支持される商品」の創出に見事成功した事例だと言える。