Branding Knowledgebase SINCE.

ヤマハはピアノ市場縮小をどう切り抜けたのか?【ブランド再活性の成功事例】

CATEGORY : ブランディング成功事例

TAGGED :

UPDATE : 2018.11.05

文責 : 松山響

この記事のポイント

ヤマハ:「本物のピアノさながらの電子ピアノ」で成功

サントリー:ハイボールの「オジサン臭い」を一新して成功

成熟を迎えた市場が、徐々に縮小していき、競合企業もその市場から撤退していく状態をプロダクト・ライフサイクルの考え方では「衰退期」と呼ぶ。

市場そのものが衰退しているため、何も手を打たなければ売上も需要も下降するのみ。

こうした状態においては、自社のブランドの寿命を考慮しながら、収益性を見極めて撤退するタイミングを決めることで、損失を最小限に抑えることが重要である。

もう一方の道として、市場に新たな技術や新機能を開発して再び市場を活性化させるという方法がある。

成熟した市場ではアイデアが出尽くしているケースが多いので、そこで新しいものを生み出すのは決して簡単ではない。

しかし、諦めずに知恵を振り絞れば、市場と商品は絶えず活性化できることを、先人たちの事例は教えてくれるのだ。
 

ヤマハ:本物のピアノさながらの
電子ピアノを開発して成功

ヤマハは創業以来、最高品質のピアノを製造するために並々ならぬ努力を続け、その結果、世界のピアノ市場の40パーセントを獲得。トップブランドとしての地位を確固たるものにしていた。

しかし、トップの座に上り詰めてから、ピアノの市場自体が毎年10%ずつ縮小していく。同時に、韓国から低コストのピアノが市場に参入し始めていた。典型的な衰退期の傾向である。

同社は市場の状況を入念に調査したところ、世界には4000万台ものピアノがあるのに、そのほとんどが調律されず埃を被っていることに気づく。この状況では高品質なピアノが売れるわけがない。
 

そこで彼らが取り組んだのは、従来のヤマハピアノと同じ外見や弾き心地、クオリティを持つ、電子ピアノの開発である。
 

1988年に生まれたヤマハ・ディスクラビアは、高レベルなデジタル技術と電子工学によって、鍵盤のタッチとスピードの強さを127段階に識別。本物のピアノさながらの弾き心地を再現した。

加えて演奏の録音と再生が可能で、著名な演奏家の演奏を自動再生することもできる。

前者は作曲家や専門家、音楽教師などにウケが良く、後者は「ピアノを買っても続くかわからない」と買い渋っていた層の背中をひと押しする役目として貢献。

なによりも、所有する家具に愛着を持ち、本物のピアノの外見や音やタッチを楽しむ人々にとって、ディスクラビアは新しい選択肢となったのだ。
 
 

この画期的な新製品は発売後、たちまちヒット。低価格な電子キーボードや電子オルガンへの反撃となり、ピアノ市場は再び活性化しはじめる。

そして、発売開始から3年後には、ヤマハの売上高の20%を占めるまでに成長したのだ。
 
 

サントリー:ハイボールの
「オジサン臭い」を一新して成功

【ハイボール】

2000年代後半、若者のウイスキー離れなどによってピークの1/6の販売量まで落ち込んでいたウイスキー市場。

そんな中、サントリーは「ハイボール」の復活プロジェクトを立ち上げる。ハイボールの古臭い、オジサン臭いイメージを変え、ビール感覚で飲む角ジョッキを浸透させようと試みたのだ。
 

焦点を当てたのは居酒屋。「こだわり3ケ条+1」というマニュアルを配布したり、「ハイボールタワー」というサーバーを開発したり、時にはハイボールのセミナーを開催することで、居酒屋で誰もがおいしいハイボールが作れるように奔走する。
 

そして、徐々にハイボールの出荷が増えてきたタイミングを狙って、ハイボールのイメージを変える広告を大々的に発信する。

「ウイスキーが、お好きでしょ」のCMをはじめ話題作を連発し、1年程度で若者の認知度は3割から8割近くまで急上昇。若者以外の層にも浸透、また居酒屋から晩酌シーンにも広がっていき、まさしくハイボールを復活させるどころか、これまでにないハイボールブームを生み出すことに成功したのだ。

RELATED ARTICLE

ご相談ください お問い合わせ