ポジショニング戦略とは、商品やサービスについて独自の優位性を持つポジションを築き、ターゲットとなる顧客の頭の中に差別化されたイメージを植え付ける戦略のこと。
簡単に言えば、市場における自社製品(サービス)の立ち位置を戦略的に決めることを指す。
思うような売上や成果の上がらないブランドを、切り捨てるのは時期尚早かもしれない。なぜなら、ポジショニングを変えたことで息を吹き返した成功事例が多々あるからだ。
ハイチオールC:2日酔い対策から
しみ・そばかす対策にシフトして成功
エスエス製薬の看板商品の一つ、ハイチオールC。その誕生は1970年代に遡るが、もともとは中年男性向けの二日酔い改善薬として販売されていた。
発売当初から売れ行きは好調だったものの、1990年代に入ると、売上は横ばいの状況になる。
1998年、同社は大胆なポジショニング変更を決断する。
ハイチオールCの成分には2日酔いを緩和する肝臓への働きがあるが、メラニン色素の無色化、新陳代謝を活性化させる効果も認められていた。
そこでターゲットを中年男性から一気に若い女性へとシフトし、コンセプトを「美白=女性のしみ・そばかす対策」としたのだ。
このコンセプトに基づいて、1回あたりの服用量を4錠から2錠にするなど、女性に合わせた商品仕様に変え、広告やWebサイト、流通ルートも変更。
「シミ、のんで治そう。ハイチオールC」のフレーズで多くの女性の心を捉え、売上を倍増させることに成功した。
ドライゼロ:「ビール好きがアルコールを飲めないシーン」に着目して成功
ノンアルコールビール市場は、2009年にアルコール分0.00%のキリンフリーがドライバーや妊娠中の女性の間で大ヒット。キリンに追随する形で他のメーカーも0.00%のノンアルコールビール飲料を販売し始めていた。
その中で遅れを取っていたのが、アサヒビールの「ダブルゼロ」。2010年に発売したものの、シェア率はわずか2%だった。
完全なる一人負けの状況を打開するために同社は、5000人以上に及ぶ顧客調査を行なった。
そこで発見したことは、消費者はノンアルコールビールに対して「本格的なビールの味を求めている」ということ。
当時はアルコールが飲めない人や女性が主なターゲットだったため、ライトな味わい、カロリーオフなどの健康的な訴求が主流だった。しかし、普段からビールを飲む人がアルコールを摂取できない場面で、ノンアルコールビールは味わいの面で顧客ニーズを満たせていなかったのだ。
ターゲットにすべきは、ビールに飲み慣れている男性。目指すべきはビールの完璧な代替品だ。
こうして生まれた「ドライゼロ」は、その本格的な味わいで新しいポジションを開拓。発売早々に20%を超えるシェアを獲得したのだ。