東芝の工場の同好会から始まった男子バスケ界の古豪
川崎ブレイブサンダースは、プロバスケットボール男子のB.LEAGUEに所属するチーム。
創立は1950年にまで遡り、最初は東芝の小向工場で同好会としてスタートしたチームだった。
その後、1955年に関東実業団連盟に加盟すると、関東実業団リーグ1部、日本リーグ2部、日本リーグ1部と順調に昇格を果たし、2000年には天皇杯と日本リーグの2冠を達成。2014年にはNBL初代王者となり、さらに2016年開幕のB.LEAGUEでは初年度準優勝を記録。今では日本バスケットボール界を代表する強豪チームの一つである。
東芝からDeNAへオーナーが譲渡。当然チーム名やチームカラーは変更に…
そもそもこのチームは発足当時、「川崎レッドサンダース」という名前だったが、2001年に東芝グループのスポーツを象徴する「ブレイブ」という言葉をチーム名に採用した経緯がある。
そして、2018年。このチームの運営権が東芝からIT大手のDeNAに移された。
社長には、プロ野球で横浜ベイスターズの集客と収益を大きく改善させた実績のある元沢伸夫氏が就任。チーム力の強化だけでなく、年間来場者数を3倍以上増加させることを目標に掲げた。
DeNAがオーナーになることが決まった際、当初はクラブ名やチームカラーも変更する予定だったという。ブレイブは東芝を象徴する言葉であるし、DeNAを象徴するブルーのカラーに統一したいと考えるのは当然のことだろう。
しかし、元沢氏は「ブースター」と呼ばれる熱狂的なファンたちと1人あたり90分もかけてじっくり対話をしたという。
そしてファンたちのチームに対する熱い想いを知った本沢氏は、チーム名は変えず、チームカラーも少し明るくはしたもののエンジ色を継承することに決めた。東芝側もそれを快く承諾したのだ。
ロゴは大胆に変更も、随所に歴史と伝統への敬意を感じさせる
一方、思い切って手を加えたのがチームロゴである。
新しいロゴはチームの象徴であるカラー「ブレイブレッド」を継承しながら、さらに勝利と誇りを表す「ヴィクトリーゴールド」を加えた。
そしてメインとなるモチーフには、ゴールリングに稲妻が突き刺さる絵を採用。プレーの力強さやスピード感、勝利へのこだわりを表現している。
その中でも、チームやファンに敬意を表しているのが、ゴールリングの内側に沿って記された「SINCE 1950」の文字。これまで積み重ねてきた歴史を背負って未来に進むことを示したもので、新しいロゴは往年のファンたちの心もがっちりと掴んだ。
ロゴはバスケットコートのセンターサークルやTシャツなどのグッズに採用。すぐさま馴染み、今では川崎ブレイブサンダースを象徴する立派なアイコンとなっている。
事業継承のほうもスムーズに進み、ファンからの理解を得ながら、スタジアムの刷新など新しいことに挑戦する土壌を作ることに成功したDeNA。
ファンの気持ちに寄り添い、「変えること」「変えないこと」を見極めた点が成功の要因であったことは間違いない。