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外道

CATEGORY : 今日の一筆

UPDATE : 2018.12.02

文責 : 一筆太郎

外道
 
げ‐どう【外道】‥ダウ 
(1)〔仏〕仏教以外の教え。また、その教えを奉ずる者。六師外道、九五種の外道など。⇔内道。 
(2)真理にそむく説。邪説。また、それを説く者。 
(3)災難をもたらすもの。悪魔。 
(4)邪悪の相をあらわした仮面。 
(5)他人をののしっていう語。「―畜生」 
(6)(釣魚用語) 目的の種類と違って釣れた魚。
 
 
広辞苑によると、外道にはこのような意味がある。総じて悪い意味である。本流からは外れていて、邪で、背いていて、悪意すら感じるような、嫌われ者を想像させる言葉だ。
 
 
かくも強い意味を持つ言葉が魚釣りに使われているのはなぜだろうか。たとえばカワハギを釣ろうとして、ベラが釣れたとする。あまりにもベラばかり釣れると、たしかに「この外道め」と叫びたくもなる。その瞬間、ベラは本流からは外れた嫌われ者なのだ。しかし、なにもそこまで言わなくてもと思わなくもない。正直いって僕はベラをそこまで憎んではいない(針から外しにくいのはおいておかねばならないが)。淡いピンクをウロコで光らせたボディはとても美しいし、釣り上げるときの引きだって悪くない。
 
 
ならば、ほかの言葉を当てはめてみるとどうなるか。たとえば、本命の相手がいながら本命ではない異性と付き合うことを「浮気」と呼ぶ。カワハギが本命ならば、ベラは浮気相手である。そんな浮気相手に「この外道め」と言ってしまうのはあんまりだ。「今日は浮気しちゃったな」くらいにしてやるわけにはいくまいか。
 
 
いやしかし、これは本命のカワハギが釣れていることが前提となってしまう。本命がいなくては浮気もなく、外道といわれても仕方がない。
 
 
プロレスの世界では、外道はヒールと呼ばれる。正義と悪の構図を明確に打ち出すことで、正義が悪を倒す、もしくは反撃されるというストーリーを構築するために重要な存在だ。アブドーラ・ザ・ブッチャーやスタン・ハンセン、最近では蝶野正洋など、さまざまなヒール役のレスラーが活躍し、ときに正義軍よりも人気を博した。
 
 
このヒールという言葉をベラに当てはめてみたらどうだろう。「この外道め」の代わりに「このヒールめ」と言ってみる。どうやら僕にはこちらのほうがしっくりくるように思える。魚釣りに外道がいなくてはつまらない。外道あっての魚釣りなのだ。活躍し過ぎるとがっかりしてしまうヒール役のレスラー同様、釣れ過ぎるとがっかりしてしまうが、釣れなきゃ釣れないでつまらない。これからは外道をヒールと呼んでみてはどうだろうか。

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