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お正月と正しい目標

CATEGORY : 今日の一筆

UPDATE : 2019.01.01

文責 : 一筆太郎

正月は目標を立てないとなと思う。会社の期は3月でしまるし、12月末というものに特に必要性は感じないのだが、小さい時から刷り込まれたミームのような何かが目標を立てろと言ってくる。1年を12月で切るのか、3月で切るのか人それぞれだし、どういう単位で人生を振り返ろうが、スタートを切ろうが構わないじゃないか。そんなはすかいから物を見るようにぶつくさ心の中で呟きながら初詣に出かけるのだが、賽銭を投げ入れて手を叩くと何か今年こそはと目標めいた何かが沸き起こるような気がしてくるから不思議だ。神様についてどうこうということはないが、その存在は有難いものだと思う。

去年は8月にブランディングカンパニーSINCE. という会社を立ち上げた。まだ4ヶ月しか経っておらず生まれたばかりの赤ん坊だ。今年はこの会社を飛躍させなくちゃいけない。ブランドを築くように育てながら、売上を爆発させたい。これに尽きる。が、これは正しい目標ではない。マイケル・ポーターは正しい目標とは、長期的に高いROI(投資利益率)から考えるものでなくてはならないと言っている。戦略を立案するにあたり、その基礎を持続可能な収益性におかなければ、真の経済的価値を想像することはできないと言うのだ。先ほどの僕の目標めいたものは目標にあらず、ただの願望に過ぎない。

そうなると途端に面倒になる。ポーターは、「顧客が支払う価格が、製品やサービスを生み出すコストを上回っているとき、経済的価値は創出される。売上や市場シェアから目標を決め、利益は後からついてくると考えていると、陳腐な戦略しか描けない。」なんてことも言っている。長期的に高いROIを実現するための目標とは一体なんなのか?会社の売上を爆発させるなどと甘い言葉では許されないのだ。ポーターに習うならば、まずは5つの競争要因から考えなくてはならない。5つの競争要員とは、新規参入者の脅威、サプライヤーの交渉力、買い手の交渉力、代替品の脅威、そして既存企業間の競合のことだ。その中でも自社の業界を正しく定義することの重要性を説く。業界の境界線をどこに引くかによってポジショニングの戦略も変わってくるし、戦略自体に大きく影響するのだ。

こうなってくると正月気分など吹っ飛んでしまう。神様に今年の願いを言っていた自分が懐かしくなるし、おみくじを引いた自分や絵馬に願い事を書いた自分がなぜだか悲しくなってくる。神頼みの気分と戦略の頭脳が同じ脳みその中で戦っている。日本企業には戦略がないとポーターも書いているが、桜を見て秋の豊作を願い予祝をして必死に働く日本人にはなかなか欧米のマーケティング感覚は馴染みにくいのかもしれない。

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