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男子厨房に入らず。

CATEGORY : 今日の一筆

UPDATE : 2019.02.24

文責 : 一筆太郎

開発には立ち入らぬことに決めた。
 
 
僕らにはITの優秀な開発チームがいる。パラシュートという名前で長年活動している。彼らは品質に対して強い責任を持ちながら、クリエイティブに対して挑戦的で、クライアントのスケジュール要件をなんとかのもうとする。人間的にも優しくて、見た目は少し驚くかもしれないが、中身は実に紳士的で愛嬌に溢れている。
 
 
そんな彼らは開発に入ると鬼のようになる。一分一秒を全力で開発に捧げるのだから、それはさながらピークタイムの厨房の料理人たちのようなものだ。訳のわからない客からの注文や要望には容赦ない言葉が飛び交うし、独自のツールや用語を用いてクオリティと開発スピードを高めようとする。そこに素人が立ち入ろうものなら、ひとたまりもない。ツールも用語もわからず、あたふたとするばかり。そんな姿を見ると、まずは厨房を取り仕切るリーダーが冷たい目線をくれる。そして、あまりにも態度がひどいと見なされるとレッドカードを出されて退場するハメになる。
 
 
僕は開発(いや、制作というべきか)上がりだと自分で思っていた節がある。学生の頃から映画をつくっていたし、映画のプロの現場も経験したし、最初に入った会社ではCD—ROMのオーサリングをやっていた。イベントやテレビ番組なんかの制作もやった。それから雑誌の編集もやったし、巨大のウェブの開発やCMの制作現場の経験だってある。でも、それだけだ。決して開発のプロフェッショナルではない。高校時代の友人は東映の大道具としてチームを率い、さまざまな映画をつくっている。映画学校時代の同級生は、卒業後にテレビマンユニオンに入り、カメラマンとして映画界で今も活躍している。そんな彼らと僕は違う。映画の現場では僕は最初は照明チームだったけど、その後はずっと演出の部隊にいた。カチンコは握っていたけど、自分の手で何かをつくってきたという手触り感のようなものを持ってはいないのだ。自分で本を書いて撮影編集もしてきたが素人に毛が生えたようなもので、プロの現場での経験とは呼べない。
 
 
僕は開発のプロフェッショナルではない。そう思うと、日頃の仕事におけるスタンスを変えなければならないと気づいた。さも開発の仕事だってできるかのようにプロたちと接してきてはいないか、体制図をつくる際に自分をほんのわずかでも開発に含ませてはいないか気になった。足手まといが厨房にいることを想像すると、それが自分だと思うとやるせなくなる。一刻も早く退場しなければならない。
 
 
僕がやるべきことは何をつくるのかを明確にすることだし、開発チームの能力が最大限にクライアント価値につながるように導くことだ。そして、最後には自分たちの価値につながるようにしなければならない。チームや自分のポジショニングも間違わないように注意しながら進めることが大事だし、客観的にウォッチしながら調整することが必要だと感じた今日でした。

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