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本の街、神保町。小宮山書店が好きすぎる

CATEGORY : 今日の一筆

UPDATE : 2019.03.03

文責 : 一筆太郎

今日は東京マラソンが開催されているらしい。あいにくの雨だけど、本日の東京の街の主役はランナーである。東京の混雑した道路がランナーのために封鎖されるのは、ランナーからしたら爽快なんだろうなと想像してしまう。信号が止まっているだけで、社会のルールがとっぱられた、なんというか無礼講のような感じがしてたまらない。数万人が信号無視をするというのが革命的というかお祭り的というか、ハレの日ぽくていい。
 
 
昨日の酒がずいぶん残っていて起き上がるのも面倒だったけど、事務所に行かなければと思った。原稿もずいぶん溜まっているし、それ以外の仕事もある。しぶしぶ雨で淀んだ空の下に足を踏み出した。スマホを見ながら歩いていると、何日か前に買おうかと思っていた本があったことを思い出した。それは澁澤龍彦の全集だった。全22巻の別巻2冊で35000円で出ていたから安いなと思ったのだ。ネットで買えるのだけど、なんだか店に買いに行きたくてその時は買わず、でも結局行く時間がとれなくてそのままになっていた。それは都合がいい。買いに行こうじゃないか。何が都合がいいって、今日は二日酔いだし、雨だし、気分が乗らないのだ。そんな日に澁澤龍彦全集を買いに行くのはおあつらえ向きだと思ったのだ。その店は神保町にある。足は一気に軽くなり、神保町へ急いだ。
 
 
神保町に行ったら小宮山書店は必ず覗きたいと常に思っている。小宮山書店は1階に入ると森山大道や東松照明なんかのプリントがあって、2階には絵もあれば図録などの美術系の本が並ぶ。3階は哲学で中2階や中3階にもファッションや宗教系の本がある。そして4階は三島由紀夫関係となっている。僕は、この小宮山書店が昔から好きだ。アートを買えるチャンスが身近で、店の中に気づくと1時間いてしまうことも多々ある。今日もまずはそこから始めた。店内をいつものように物色し、横尾忠則のポスターを買おうか迷いながら、とりあえず外に出た。短い時間だったけど、お腹がいっぱいになるような不思議な満足感があった。一本裏の道に行くと、ガレージセールという文字が目に飛び込んだ。あばら屋のようなまさにガレージに本がここかしこに並べられていた。「1冊でも2冊でも3冊でも500円」と紙札に書かれていた。こういうところはきっと人気のない売れ残りを叩き売りしてるんだろうなと思ったが、もしかしたら何かお宝があるかもしれぬと傘をたたんで店に入った。傘立てはビール瓶を入れる箱が裏返されているものだった。本を見たら驚いた。日本思想体系や日本絵巻物全集があるじゃないか。全集のコーナーには、『定本 柳田國男集 新装版』(筑摩書房)が半額だし、『現代日本戯曲大系』三一書房も格安だ。これはやばい。久しぶりに古書買いのスイッチが入り、結局74冊買ってしまった。聞けば、ここは小宮山書店が運営するガレージセールだった。小宮山書店で売れなかったものやバラになってしまったものなどを格安で販売しているという。道理でセレクトが良いわけだ。
 
 
74冊買ってしまった今となっては澁澤龍彦全集24冊を買う気にもなれず、異様な満腹感と達成感を得て、事務所へと帰ることにした。

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