フルグラが「シリアル市場」から「朝食市場」へポジションチェンジして成功したように、牛丼のすき家は「家族で楽しめる牛丼屋」というポジションを発見して成功した。このようなポジショニング戦略に長けている会社で優秀なのが大塚製薬である。
大塚製薬はオロナインから始まり、オロナミンCやゴキブリホイホイなどロングセラー商品を生み出し続けてきた。中でもオロナミンCはポジショニング戦略によって成功したブランドだということができる。最初はコカコーラに競合する商品をつくろうと開発が進んでいたものを栄養ドリンク市場にポジションチェンジし、リポビタンDをライバルとしながらヒット商品に成長させた。
ポカリスエットも大塚製薬が誇るロングセラー商品だ。僕が小学生のころ、すでに部活にはポカリスエットというイメージが浸透していた。風邪をひいたらポカリスエットというイメージもいつからか持っている。
発売当初のポカリスエットは日本ではまだ市場のなかった「スポーツ飲料」を先駆けて発見し、消費者から絶大な支持を得た。その後、スポーツ飲料市場に競合が増えてきて競争優位性が低くなると、「清涼飲料水」市場へポジションチェンジする。一見、フルグラのように広い市場へポジションを変えたように見えるのだが、ここでポカリスエットは独自のブランド資産を生かした戦い方をする。それが、消費者に支持されていた「イオン飲料」や「水分補給」といった健康的なイメージだった。
清涼飲料水はコカコーラをはじめ、甘くて、健康的なイメージを持っていないものが多い。母親にジュースばかり飲んでるんじゃないと怒られるような不健康なイメージのある市場において、その反対の意味の健康をキーワードとして入れることは圧倒的な勝ち組ポジションとなるものだった。
さらに、2010年にポカリスエットが30周年を迎えると、ブランドに親しんできた層も一緒に歳をとってきたと感じ、一気に若返りをはかる。ダンスを取り入れ、「青春」というワードまで獲得してしまった。恐るべしポカリスエット、恐るべし大塚製薬なのである。ポカリスエットは広告も優れたものが多い。P&Gはアメリカ的なブランディング戦略によって成功しているのに対し、大塚製薬は日本的なブランディング戦略を確立しているように思える。