スタートアップ企業はブランディングを経営戦略に入れたほうがいい理由
ブランドとは未来の成功のための足場であり、その組織のために継続的な価値を生み出すものである。したがってブランド構築は、「戦略」に属する。
売上を伸ばすための「戦術」とはまったく異なる。
デービッド・アーカーはこのように言っている。
未来の成功のための足場であり継続的な価値を生み出すもの。ブランドがそのようなものだとしたら間違いなく、経営戦略に必要なものになる。
だが、多くの会社の経営戦略にブランディングは含まれていない。大きな日本の企業でブランド戦略が経営戦略に含まれていることはまずない。その理由として、アーカーは3つ挙げている。
その1。短期的財務業績の力が圧倒的に強いから。すぐに結果を出すことを求められ、長期的視野で経営戦略を立てて実行するのが難しい。「そんな未来のことより、今だろ、今!」という声は容易に想像できるだろう。経営の現場は戦場なのだ。
その2。ブランド構築が至難の業だから。的確なブランドビジョンを描いて実現すること自体が困難なことだという。成功するのかが見えず、賭けに近くなってしまうのだろう。
その3。マーケティング機能を持たない企業があるから。B2Bや中国企業のような政府保護のもと経営されているところなどに見られる。ブランディングはマーケティングに属するところだから、マーケティングという観念がなければブランディングもないというわけだ。
欧米企業ではブランドは資産だという認識に変わってきていて、経営戦略にブランド戦略を持つ企業が増え、サービスや商品にはブランド戦略が当たり前に存在する。
日本は市場環境が違うからか、まだその速度は遅いようだ。
がしかし、ことスタートアップ企業に関しては、ブランド戦略を経営戦略に取り込んだほうがいいと思うのだ。
その理由は、とてもシンプルなのだけど、スタートアップはIPOや事業売却といったエグジットを目的としていることが多く、ブランド戦略はエグジットする際のバリューを上げることができるから。
僕が今まさにスタートアップとして会社をやり始めたことも、これまでスタートアップ企業で働いてきた経験も、そして、数々のスタートアップ企業とパートナーとして仕事をさせてもらっている経験からも、ブランド戦略の大きな価値を感じている。
スタートアップ企業のブランドをつくるとき、最初に考えるのは「私は誰だ?」である。
スタートアップ企業は事業内容が明確なこともあるけど、変更が頻繁に入って何を事業とするのか定まっていないことが多い。事業ドメインをなんとするかだけでもその企業のイメージは大きく左右される。変化の波を乗り越えていくスタートアップ企業にとって、その舵取りをする社長は自分がどこの海を走っているのかわからなくなってしまいがちだ。自身がわからなければ社員もわかるはずもない。ましてや証券や投資家だってわからない。どこを目指していたのか、今、どこにいるのかブランド戦略を立てると必ず見えてくる。これがよくできていればいるほど、強い推進力を持つことになるし、最終的なバリューアップにつながっていくのだ。
自社を客観的に見ることが第一歩となり、その客観的なイメージがゴールになる。
ゴールイメージをどのようになるかはブランド構築にかかっていると言っても過言ではない。