この本は「梅林の家」という一戸建ての家を建てるプロジェクトが物語になっている。梅林の家は、映像をつくる父と広告会社に務める母と中一の長女に小一の長男、それにおばあちゃんと猫という家族構成だ。彼らは最初は一つの大きな部屋を求めたが、それぞれが大切にしているものがあることに気づき、部屋を分けることになった。その数18。ちなみに90平米の三階建である。トイレなども含むが、部屋は18なので実に多いい。一階には、玄関の部屋、食事室と台所、おばあちゃんの3畳の和室、長男のベットの部屋、トイレと洗面所がある。2階には本棚の部屋、父母のベッドルームと納戸、長女の勉強部屋とベッドの部屋、それに長男の机の部屋がある。3階には、お風呂とトイレ、お茶の部屋、テラス、それに離れといった具合だ。それぞれ小さいが独立した空間であり、プライバシーが守られている。
最初に家を建てるとき、この家族は大きな部屋がほしかった。それは家族のコミュニケーションをとる場がほしかったのだろう。家族という塊のようで個別な共同体を一つだと思える場といえるのかもしれない。結局、家族の象徴のような一つの大きな部屋はつくらなかったが、妹島和世は梅林の家にその大きな部屋の役割をもたらせた。それは、直接書かれてはいなかったが、窓にあるのだと思う。各部屋には実に多くの窓が開けられている。小さくて、隣の部屋から隣は見えるが、プライバシーは守られる窓がいくつも。おばあちゃんが座っているなという気配と遊んでいる子どもたちの気配と本を読んでいる夫婦の気配が一つに繋がって、家族という一つの気配のようなものになるのではないだろうか。
点と点をつなぐヒントを窓になるのだと妹島和世さんから学んだ。