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架空のストーリーで、ブランディングの醍醐味を解説

CATEGORY : ブランディングを本に学ぶ

UPDATE : 2019.09.29

文責 : 山田 歩

この記事のポイント

架空のストーリーでブランド再生のツボを解説

ブランド競争の一服の清涼剤にして良薬

『奈落の底からはい上がるブランド再生ストーリー』
フミ・ササダ著  宣伝会議/2014年2月25日発行

ストーリー仕立てで、ツボを押さえた本格戦略書

本書は「明治ブルガリアヨーグルト」や「キリン氷結」などを生み出してきた、ブランドコンサルタントであるフミ・ササダ氏による、ユニークなブランディング本である。創業25年を迎えた生活用品メーカーである株式会社クリンビュー(架空)を舞台に、自他ともに認めるダメ部長である土門明夫(45歳)がブランド再生のために奮戦する様子をストーリー仕立てで展開。著者のこれまでのノウハウが、いたるところに散りばめられた秀作だ。

ダメ部長である土門明夫の部署の商品が売り場から排除されることをきっかけに、自らブランド委員会を立ち上げて、V字回復のために新商品の開発に奮戦する様子は、様々な業界の方々にとって参考になるのではないかと思う。

内容についてはストーリー仕立てになっているので楽しみながら面白く読める。しかしブランド再生のステップはきちんと押えてあり、本格的な戦略書として読むことができるだろう。

■Step1(2~3章)ブランドに対する意識を変える
■Step2(4~5章)ブランドコアの抽出
■Step3(6~7章)商品企画
■Step4(7~8章)販売・PR

このようなステップで、ブランド再生のフレームワークに従い、土門明夫の奮戦とともにリアリティのあるストーリーが展開されるのだ。一言でいうと、面白くて、ためになる。このようなブランディング本は珍しいのではないかと感じた。

ストーリー&フレームワークで、戦略見直しや立案に役立つ。

本書も章立てやタイトルが面白く、また内容を理解しやすいと思うのでご紹介。

【序章】  店頭から商品が消える日
【1章】  創業25年目、どん底に落ちたメーカーの行く末
【2章】  会社のピンチには猫の手も借りたい!?
【3章】  ウチの商品なんて使いたくありません!
【4章】  ウチのブランドはハムスターになれますか?
【5章】  ブランドバリューは図から導き出せ
【6章】  商品企画はブランドコアを確認してから
【7章】  いよいよ新「クリンピカ」、商品化
【8章】  そして土門はヒーロー社員に変身した

このように紹介していくと、なんとなく内容が想像できるのではないだろうか。自社やクライアントの商品に照らし合わせて読むことで、おおいに参考になるかと思う。

あとがきに「ブランディング計画を通じて私たちが達成しなくてはならないのは、一にも二にも商品の売上を伸ばすことです。(以下略)ブランドが存在している限りブランディング戦略に終わりはありません。戦い続けなければなりません。(以下略)」とあるように、ブランディングの戦いは終わりなき戦いであることは間違いない。

戦いが続く日々において、このような本はまさに一服の清涼剤にして、良薬と言えるものだと感じた。

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