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シズルとブランドの関係について

CATEGORY : ブランディングを本に学ぶ

UPDATE : 2018.10.28

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

シズルとは何か理解できる

シズルのデザインを言葉から参照できる。例えば、もちもちのデザインとかとろーりのデザインなど。

食品パッケージにおいてデザインは何が重要か

シズルのデザイン
食品パッケージに見るおいしさの言葉とヴィジュアル
B・M・FT ことばラボ編著

この本はスゴイ!

なにがスゴイってシズルという感覚的表現をことばで理解させてくれるところがスゴイ。

ブランドとシズルの関係も引き出しているし、
クリエイティブのレファレンスとしてだけでなく
商品づくりの参考に大いになる本だと思う。

シズルとは何か?

 
シズルは、英語のsizzle。
ステーキが焼ける時のじゅうじゅうと音を立てる様を意味する。
 
 
だが日本では、もっと広い意味で用いられる。
ステーキなら焼ける音だけでなく、匂いも、肉汁もシズルである。
 
 
さらには料理だけでなく、化粧品やファッションなどの分野でも用いられる。
僕は車の広告制作に携わっていたが、そこでもシズルは頻出ワードだった。
 
 
 
そもそもシズルは、
エルマー・ホイラーの著書『ステーキを売るな、シズルを売れ!』が
大きな影響を与えたという。
 
 
アメリカでは1937年にホイラーの最初の著作が出版されたようだが、
日本では1971年に上記の著作が発売され、大きな話題を呼んだ。
 
 
このシズルというワード、
アメリカではもはや忘れられているようだが、日本では独自の進化を遂げた。
シズルは五感で欲求を高めるという意味として大活躍しているのだ。
 
 
シズルは、音や匂い、歯ざわり、肌ざわり、味、見た目といった感覚を刺激する。
 
 
パリッ、香ばしい、もちもち、ふわふわ、まろやかといった
ことばを見ただけで味や雰囲気が想像してしまう
そんな攻撃性を持っているのがシズルなのだ。
 
 
シズル、日本人は好きなんだと思う。
 
 
日本にはオノマトペや擬態語、擬情語といった独特な表現がある。
漫画などにも使われていて、馴染み深いのだろう。
 
 
シズルワードの分野別トップ20も掲載されているが、
人がおいしいと感じるワードは以下の通りだという。
 
食感系は、「もちもち」「ジューシー」
味覚系は、「濃厚な」「うまみがある」「コクがある」
情報系は、「贅沢な」「焼きたて」「揚げたて」
 
 
どのワードも確かに感覚を強く刺激する。
と書くいていると、僕の腹が鳴った。
 
 
 

シズルのあるクリエイティブ表現とは何か?

 
僕はガリガリ君のパッケージを見ると歯がキーンとするような錯覚に襲われて顔をしかめてしまう。
 

 
本書では、ガリガリ君のパッケージが「ザクガリドロ」というシズルワードの例として挙げられている。
 

「ガリガリ君」の商品名のタイポグラフィーの尖がり具合や、青色グラデーションから、清涼感を感じさせる。2口で食べたであろう歯型のザラザラとした断面からは食感の連続と氷の刺激的な食感を期待させる。

 
 
といった具合に
「もち」ならば雪見だいふくが
「ふわ」ならば花ふわりというお菓子のパッケージが
ビジュアルとともに解説されている。
 
 
デザイナーの参考になることはもちろん、
クリエイターに感覚的なシズル表現を求めるときの
レファレンスとしても役に立つだろう。
 

パッケージは「構造と意匠」という二重構造で考える。ブランドは構造に、シズルは意匠に宿る

 
 
本書の終わりには「おいしい」パッケージってなに?と題して
佐藤卓さんや小川裕子さんらのインタビューが掲載されている。
 
 
その中で佐藤卓さんは

    シズルは「らしさ」と密接に関係していると感じています。

と言う。
 
 
そして、「らしさ」をどのように生み出すのか、「明治おいしい牛乳」を例にそのヒントを明かしてくれている。
 

 
まず、佐藤卓さんは、パッケージを「構造と意匠」という二つに分けて考える。

これは建築用語だそうだが
構造とは、スーパーの中で商品の3メートル手前に来た時に見える風景である。
明治おいしい牛乳は3メートル先から見ると、白い牛乳パックの上に青い帽子をかぶっているように見える。そして、なんとなく名前が真ん中に一本見える。その3点を構造として捉えている。

1メートル先にくると、
「おいしい牛乳」の文字が見えて、その後ろにコップに牛乳を注ぐ写真が目に入る。
それが意匠にあたる。

さらにおもしろいのは
シズルは意匠にあることが多く、構造はブランドの根幹になるということだ。
 
 

長く売り続ける商品は定期的にパッケージデザインを変化させる必要がありますが、この時に構造部分をいじってしまうと、せっかく記憶に残ってきたものがリセットされてしまう。僕たちがすべきことは、構造の部分を記憶に残しつつ、意匠の部分でその時代にあった表現をすること。そうすれば、遠くから見ても消費者が「あ、いつも買ってるアレだ」と、その商品までたどり着けるというわけです。

 
 
売上を上げながらブランディングするにはどうしたらよいか?
僕はいつも考えるのだが、佐藤卓さんの話には大きなヒントが詰まっていると思う。

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