Branding Knowledgebase SINCE.

魅力的なサービスを生み出し続ける方法

CATEGORY : ブランディングを本に学ぶ

TAGGED :

UPDATE : 2018.10.27

文責 : 一筆太郎

この記事のポイント

内と外の価値観をぶつけ合うことで魅力を引き出す

まずは自分が楽しむことから、よいサービスは生まれる

フラットな組織文化が持続可能な競争力を生み出す

『トップも知らない星野リゾート』
前田はるみ著

 
 
 
 
サービスは一度つくって終わりではない。

と本書の中で書かれている。これは、まさにブランドについて言えることだ。

ブランドは一度つくって終わりではない。

 
 
ブランドはInter Brand社が

    ブランドとはliving business asset(常に変化するビジネス資産)

だと定義づけているように、止まってはくれないのだ。

 

その、とどまることを知らないブランドをより魅力的にし続けるにはどうしたらよいか?そのヒントが本書にはぎっしり詰まっている。

 

 

内と外の価値観をぶつけ合うことで魅力を引き出す

 

「魅力やサービスは一度つくって終わりではない。常に進化が必要だ」
星野社長はスタッフに声をかけ続けるという。
しかし、トップの号令だけで実現できるような生易しいものではない。

 
星野リゾートには、各施設が現場主導で行う「魅力会議」というものがある。
部門や世代を超えて参加者を募り、季節ごとのコンセプトにそって、
どんな魅力を発信していけるか議論するのだ。

 
たとえば、青森屋は魅力創造を年に4回行なっている。
メンバーは毎年募集され、年間を通して参加するのが基本となる。
一年中ほぼ毎週魅力会議に参加しなくてはならない。
 
参加者の話には、こういうものがある。

 
「県外出身者と地元出身者を必ず混ぜて議論することを意識しています。青森愛の強い地元スタッフは、当然ながら青森のことをよく知っていますが、彼らには当たり前のことが多く『何が青森らしいか』はわかりません。それに気づけるのが、県外出身者です。たとえば、県南部地方の伝統工芸品である八幡馬は、地元スタッフにとっては子どもの頃から見慣れたものですが、県外出身者が見れば魅力的に映る。『これは実はすばらしい魅力だよ』と県外出身者が気づき、魅力コンテンツに作り上げたのが今秋オープンしたばかりの八幡馬ラウンジです。魅力に気づく役割と、魅力を深掘りする役割を掛け合わせて魅力創造を行なっています。」

 
 
魅力を引き出すには、内部と外部の目をぶつけ合うことが当然のごとく語られる。魅力は自分では気づきにくい。それが会社であれ、サービスであれ、個人であれ。うちには魅力なんて何もないという声を聞くこともあるが、この会議からはそんな言葉は聞こえてきそうにない。むしろいいところを探して認めるという最高のポジティブマインドが生まれそうな雰囲気だ。

 

まずは自分が楽しむことから、よいサービスは生まれる

 
さらに、
「『これが次の魅力コンテンツです』と顧客対応マニュアルを渡される場合と、自分たちでコンテンツを作り上げた場合では、やる気が断然違います。魅力創造を通してその地域を好きになり、自分たちが発見した地域のよさをお客さまにも伝えたいと思うから、魅力的に伝えることができるし、仕事が楽しくなります。

サービス業はお客さまに喜んでもらうことが大事ですが、それ以上に重要なのは、まず自分たちが楽しむことです。自分たちが味わう楽しさを、目の前のお客さまにも伝えたいと思う。それが魅力的なサービスを生み出します。」
 
 
人の心を動かすには、まず自分の心が動かなくてはならないのかもしれない。笑ってる人を見ると、つい笑ってしまう。楽しんでいる人と会話をすると、なんだかこちらも楽しくなる。まずは自分たちが楽しむ。

 
みうらじゅんは『「ない仕事」の作り方』で、自分洗脳という独特な言葉を使って、それに近いことを表現していた。ブームを起こすには、まず自分がブームの信者にならなくてはならないのだと。まずは自分の気持ちを徹底的に変えること。それが大事なのだろう。

 

フラットな組織文化が持続可能な競争力を生み出す

 
 
そもそも、このようなブランド品質を高く保ち続ける好循環を生んだのは、やらされでなく、主体的に取り組める環境をつくりだすことだった。それを代表の星野佳路氏は、フラットな組織文化こそが競争力の源泉だと言っている。
 
 
フラットな組織では、下記のような現象が現れるという。

・社員一人ひとりが相手のポジションに関係なく思ったことを発言している。
・社内の情報の流れに規制がない。相手の役職に関係なく、社員は上司を通さず話したい人に自由に話ができる。
・社員は発送や議論に必要な情報について、知りたいと思った時にアクセスすることができる。
・オフィスを見渡しても誰が役職者なのかわかりにくい。
・会議室で座る位置が決まっていない。参加者は自由に好きな席に座る。飲み会の席でも同じ。
・全員で集合写真を撮る時にも、並ぶ順番などは誰も気にしない。真ん中の方に管理職がいたりすることもなく、ランダムに並んでいる画像になる。

 
星野氏が私にとって最も大切な教科書だと語る『社員の力で最高のチームをつくる ー1分間エンパワーメント』が参考になっているのだろう。フラットな組織文化のつくり方はそちらの本を参照するとして、このような文化を定着させることができれば、多くの社員が自ら発想し、発言し、行動し、それを通じてチームの競争力を上げていくことが可能になるという。
 
 
星野リゾートについては、ブランディングマガジンでブランドの物語を紹介している。
https://since2020.jp/story/2066/

ご相談ください お問い合わせ