真正性=Authenticityは、いわゆる本物感のこと。
本物であるかどうかは、ブランドの競争力を高めるうえで重要なファクターの一つとなる。「本物のうまさ」「本物のサービス」「本物の証」など、真正性を訴求する広告は巷に溢れている。特にモノが溢れてコモディティ化した市場において、真正性が価格競争を回避する差別化のキーポイントとしてしばし注目される。
では、本物とはなんだろうか?
B・J・パインⅡとJ・H・ギルモアの名著『Authenticity』(2007)では、本物と偽物を真に見分けることの難しさが説かれている。ブランドバッグとそのコピー品の真贋であれば単純な話だが、同じ対象であってもある消費者が本物と感じる一方で、別の消費者は偽物と感じる場合も多々ある。
同著では本物/偽物の区別を5つの分類で体系化している。
(1)天然/人工
(2)オリジナル/模倣
(3)純粋/不純
(4)知覚的本物感/知覚的偽物感
(5)真面目/不真面目
以上のことからわかるように、真正性とはブランドの商品やサービス自体に存在するとは限らず、むしろ消費者側の判断に委ねられる部分が大きい。消費者の立場や属性はもちろん、目的やニーズによっても異なるし、社会的コンテクストが変われば本物/偽物が逆転する可能性もある。
真正性を訴求することがマーケティング活動において重要なのは自明の理だが、何をもって本物とするか、どのように本物を表現するかは、市場やターゲット、社会的な文脈など多方向から慎重に戦略を組み立てる必要があるといえよう。