人々の記憶に残り、相手に影響を与えるようなメッセージに共通する項目を定義したもの。スタンフォード大学経営学部教授(組織行動論)のチップ・ハース(Chip Heath)と、ューク・コーポレートエデュケーションのコンサルタントであり、ニューメディア教科書会社「シンクウェル」の共同創設者であるダン・ハース(Dan Heath)の兄弟によって提唱された。
ハース兄弟はジョン・F・ケネディ大統領のスピーチや都市伝説の拡散性などを取り上げ、記憶に残るメッセージの特徴を6つのポイントにまとめた。
Simple:単純明快である
Unexpected:意外性がある
Concrete:具体的である
Credentialed:信頼性がある
Emotional:感情に訴える
Story:物語がある
これらの頭文字を取ったのがSUCCESsの由来だ。人間の記憶の容量は大きくないから、記憶されるためには単純である必要がある。また、意外な話というのは人々の記憶に強烈に残りやすい。そして、人は抽象的なことよりも具体的なことに興味を持ちやすい。信頼性が高い話のほうが、当然のことながら惹きつけられる。当然、感情や情動に訴えかける話であるほうが良い。そして、項目の羅列よりもストーリーのある話のほうが覚えやすく、聞き手の想像力を掻き立てやすい。
このSUCCESsの法則が最も端的に表れているとされているのが、1963年、マーティン・ルーサー・キング牧師による伝説的な演説「I Have a Dream」である。人種差別のない夢の世界を作ろうという単純明快な話。「I Have a Dream」という印象的で意外性のある言葉、具体的な提言、キング牧師のカリスマ性による信頼性の担保、そして人々の感情に訴えかけ、物語性に満ちていることは言うまでもない。
このスピーチが今でも言い伝えられ、お手本とされているのは、単に歴史的に重要なスピーチだからということだけでなく、人々の記憶に刻まれ心を動かすような要素がしっかりと押さえられているからに他ならないのだ。