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未知の分野に舵を切る勇気
【コアコンピタンスの成功事例(3)】

CATEGORY : ブランディング成功事例

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UPDATE : 2018.12.05

文責 : 松山響

この記事のポイント

富士フィルムはフィルムの行く末を案じ、2つのコアコンピタンスで生き残りを賭けた

精密技術とコラーゲン生成技術が生み出したオンリーワンの化粧品

コアコンピタンスとは、企業やブランドが位置する市場において競争優位性となる要素のこと。

顧客に対して、他社には提供できないような利益もたらすことのできる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体を指す。

そして、下記3つの能力をすべて有するものがコアコンピタンスにふさわしいとされている。

(1)顧客に何らかの利益を感じてもらえる能力

(2)競合に真似されにくい能力

(3)複数商品や他の市場に汎用できる能力

では、具体的にどのような能力がコアコンピタンスになり得るのか。実際の成功事例を見てみよう。

富士フィルムは写真フィルムの行く末を案じ、
2つのコアコンピタンスを用いて生き残りを賭けた

2012年、写真フィルム産業の世界的リーダーであるイーストマン・コダックが経営破綻した。

テジタルカメラや携帯電話カメラが台頭し、写真フィルムの需要が急速に減少したことが原因である。

一方、同時期ライバルメーカーである富士フィルムの売上高は過去3年間で最も高い成果を出していた。それはなぜか? 

富士フィルムはコダックが経営破綻する何年も前から写真フィルム業界の行く末を案じ、新たな収益源の確保に取り組んでいたのだ。

その改革の中心に据えられたのが、同社のコアコンピタンス。富士フィルムのコアコンピタンスとは、精密な技術力とコラーゲンであった。

カメラのフィルムを製造するにあたって求められるマイクロレベルでの精密な技術。そして、フィルムに用いる高純度かつ高品質なコラーゲンを独自に生み出す技術。

長年、写真フィルム市場で優位性を保ち続けた2つのコアコンピタンスを活かせる場を彼らは模索する。技術的な裏付けだけでなく、その業界でオンリーワンの存在になれるか、会社の思いに合致するかなどを総合的に考慮し、2年がかりで様々な事業を検討。最終的に医療分野や高機能材料など、いくつかの事業に参入することに決める。

その中でも著しい成果を生み出したのが、スキンケア化粧品事業だ。
  

精密技術とコラーゲン生成技術で
オンリーワンの化粧品を生み出す

富士フィルムが精密技術とコラーゲン生成技術を最大限に生かして世に送り出した新商品は「アスタリフト」。

スキンケア化粧品にはコラーゲン配合を謳っているものが多いが、大半が肌の奥まで浸透することなく表面を潤すだけ。

一方、アスタリフトはミクロンからナノレベルまで異なる粒子のコラーゲンを配合しているので、一部は肌の表面を潤し、一部は肌の奥まで潤す。
  
まさに、既存商品にはない特性を持ったオンリーワン商品が完成した。

こうして生まれた新商品は通信販売からスモールスタート。すると売れ行きは予想以上に好調で、富士フィルムが化粧品を作ったという話題性もあって認知度は一気に向上。化粧品の問屋やデパートのバイヤーからの問い合わせも急増し、すぐに全国各地での店頭販売が始まった。

今やアスタリフトをはじめとするヘルスケア事業は、同社の柱のひとつとなっている。
  
自分たちが持っているコアコンピタンスを他の市場に生かすアイデアが優れていたことはもちろん、全く違う分野に応用するチャレンジ精神こそが、富士フィルムの凄さだと言えるだろう。

自社の強みを正しく理解し、未来を見据えて舵を大きく切る勇気がコアコンピタンスをより輝かせることにつながったのだ。

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