よいビジョンとはなんだろう?
ビジョンはブランディングに欠かせない要素である。
ビジョンがあるから集中(フォーカス)できる。ビジョンがあるから進む方向がわかる。ビジョンがあるから全力でがんばれる。
というのは『1分間マネジャー』(ダイヤモンド社)で有名なケン・ブランチャードだ。
ヤンキースの伝説的な野球選手で監督も務めたヨギ・ベラは「自分の目的地を知らなかったら、結局はそこにたどり着けない」と言ったし、スターバックスのハワード・シュルツは「自社が表している何かを顧客に認識させなくてはならない」と言っている。
ビジョンもいろいろな解釈で捉えられそうだが、ブランディングにとってビジョンとは、そのブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと言葉で説明したものだ。
ブランディングの教科書的存在P&Gを見てみよう。
P&G
世界中のお客様の暮らしをよりよいものにする
まず、顧客は世界中のお客様である。世界中のすべてをターゲットにしている。そして、暮らしをよりよくするとあるので、暮らしに役立つ商品やサービスを提供していることがわかる。とてもシンプルだけど、わかりやすいビジョンである。
洗濯科学のアリエール
アリエールは科学というキーワードでメッセージングしている。洗濯を科学することに使命感を持って、驚きの結果をもたらす。科学という言葉自体が常に向上して行くイメージを持っているので、アリエールは常に進化していきそうだという雰囲気も伝わる。
パンパース
すべての赤ちゃんの明るく健やかな成長に貢献する
パンパースはオムツである。だが、オムツの性能を語るのではなく、赤ちゃんのよい成長に貢献することをビジョンとしている。それが赤ちゃんを持つ母親に役立つ情報を提供するサイトを運営することにもつながっている。
ボールド
Fundry(ファンドリー)、
それは、ボールドがつくる、
楽しい(Fun)、お洗濯(Landry)の時間。
ときに慌ただしく、ときに退屈になりがちなお洗濯を、
楽しい時間にするためのお手伝い♪
暮らしに欠かせないお洗濯だからこそ、
毎日楽しんでもらいたい!
そんな願いをこめて、今日もボールドで
Fun! Fun! Fundry!
ボールドがなんなのかはよくわからない。洗濯を楽しくしてくれそうだということはわかる。洗濯を科学するアリエールは洗濯の技術面での進化にフォーカスされているが、こちらは洗濯する人の憂鬱さを改善することにフォーカスされている。
レノア
本格消臭
一番よいコピーとは、四文字熟語だと教えてくれたコピーライターがいた。本格消臭とは、わかりやすい。が、本格とは一体なんなのか。本格的に消臭しようとなれば、いつもより力が入るし、消臭効果も高くなくてはならないだろう。そんなイメージを醸し出している。
よいビジョンとは、独自性がなくてはならないと言えるだろう。世界中のお客様の暮らしをよりよいものにするという大きなビジョンは、長い歴史の中で暮らしをよりよいものにし続けてきたP&Gでなくては言えないものだ。また、洗濯科学アリエールは他の洗剤との違いを科学という明快なワードで表現している。P&Gという暮らしをよりよいものにする母体が生み出すブランドは、各分野においてどのようによくするのかを明快に語っているように思える。