ポジショニング戦略とは、商品やサービスについて独自の優位性を持つポジションを築き、ターゲットとなる顧客の頭の中に差別化されたイメージを植え付ける戦略のこと。
簡単に言えば、市場における自社製品(サービス)の立ち位置を戦略的に決めることを指す。
消費者のニーズは絶えず変化し、競合も常に進化するもの。一度確固たるポジショニングを獲得したブランドであっても、絶えず自らのポジションを見直し、勝機へのアンテナを張り巡らせることが、長きにわたって愛され、成長し続けることにつながる。
スポーツ飲料から健康的な清涼飲料、そして青春の味へ
大塚製薬の看板商品ポカリスエットは、ポジショニングを巧みに変えながら成功し続けてきたロングセラーの代表例である。
発売当初のポカリスエットは、まだ日本では開拓されていなかった「スポーツ飲料」という市場を先駆けて見つけ出し、消費者からの絶大な支持を得た。
しかし、やがて競合が次々と参入し、スポーツ飲料市場は飽和状態になる。もともと市場規模が限定的で将来的な飛躍が望めないと判断した大塚製薬は、もっと大きな「清涼飲料市場」への進出を画策する。
清涼飲料市場こそ、強力なブランドがひしめく戦場だが、ポカリスエットはブランドの資産をフル活用して堂々と参入する。
その戦略とは、消費者に支持されていた「イオン飲料」「水分補給」というイメージを武器に、「健康的な清涼飲料」というポジショニングを打ち出すことだった。
今でこそ健康を訴求する清涼飲料水は多いが、当時はほとんど競合のいないブルーオーシャン。すでに健康的なイメージを確立していたことも大きな競争優位性を発揮し、この市場でも大成功を収めるのだ。
なお、ポカリスエットは2010年に発売30周年を迎え、ブランドを親しんできた層が高年齢化してきたことで、これまで競合にシェアを奪われていた中高生にターゲットを定める。
その際に活用したのは広告の力。「鬼ガチダンス」というものすごく難易度の高いダンスを高校生が踊るCMを作ると、たちまち若者の間で話題になり、SNSで「踊ってみた」系の動画が拡散される。
ダンスのレッスン動画を配信する、CMだけでなくYoutube広告に力を入れるなど、10代にリーチし巻き込む施策も秀逸であった。
他にも様々なキャンペーン施策を打ち出すことで、ポカリスエットは若者にとってクールで親しみのある清涼飲料水のポジションを築き、「青春のポカリ」が再来したのである。