永田町で半蔵門線の電車を降りようとするとき、前にいた年配の方のジャンパーにcemedineと書かれているのが目に留まった。cemedineとは、あの接着剤のセメダインである。ジャンパーは紺色の作業用のようだ。その男性は髪を短く刈り上げていて、どこか職人然としていた。
セメダインは強烈なブランドイメージを持っている。言葉にしたら「くっつける」。このワードを独占してしまったのではないかと思えるほど、イメージが強い。くっついて離れないものといえば、すっぽんかセメダインか。僕は昭和のテレビ全盛のころにテレビに習ったのか、学校の課題を作るのに必要として知ったのか、はたまた親から聞いたいの入力ソースはわからないけど、大人になるころにはすっかりセメダイン=最強にくっつくというイメージができあがっていた。くっつきすぎて、手につくと危険だから、手についてしまった時になんとか早く水で流そうとしたけどカチカチになってしまって焦った思い出もある。
そんな「くっつける」イメージを持ったセメダインは、企業としてどんなことをしているのか気になってホームページを見てみた。すると、メインビジュアルに大きな文字で「つくることはつけること」とある。僕の記憶ではセメダインといえばセメダインで、商品名とイコールだったが、今見ると家庭用の商品だけで56もある。セメダイン木工用というのもあるし、発泡スチロール用や雨どい用など用途にわかれて商品化されている。家庭用だけでなく、工業用や建築用、土木用とカテゴリがあるが、一つひとつの商品についてはよくわからないけど、あらゆるくっつけるための材料が揃っているのではないかと思ってしまう。
このセメダインは、まさにインブランド(イングリーディエンドブランドや成分ブランドとも言われる)の代表格だと言える。インテル入ってるのインテルが、このブランディング手法を世に広めたと言ってもいいが、セメダインだって負けてない。だが、セメダインをインブランドとして考えたとき、ほかのブランドとのコラボレーションが思い浮かばなかった。インテルであれば各PCメーカーとコラボレーションをし、PCメーカーがCMをうつ際には広告費をインテルが出すなど、金銭面でも共同戦線をはった。その結果、ブランド価値とともにインテルの露出は高まっていった。
永田町のホームで見送った職人然とした男性が来ていたジャンパーは、セメダインがブランドによって、その人を職人のように見せたのだった。僕は勝手にこの人はくっつける仕事の人だと思い込み、職人っぽいなぁと連想していったのである。もしかしたら、その男性は総務の仕事をしているかもしれないし、全くセメダインとは関係ない仕事をしているのかもしれない。そんな強いブランドイメージを持つブランドであるならば、インブランドとしてさらにブランディングをしていけば、大きな価値につながるのではないか。と、余計なお世話ではあるが、そんなことを思った。