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買物欲はあるのに、買えない時代の仕組み

CATEGORY : ブランディングを本に学ぶ

UPDATE : 2019.10.06

文責 : 山田 歩

この記事のポイント

情報氾濫時代は、買うのが面倒な時代

買物を取り巻く3つの環境変化

「絞り込み」で、購入を誘導


『なぜ「それ」が買われるのか? 情報爆発時代に「選ばれる」商品の法則』
博報堂買物研究所著 朝日新書/2018年12月30日発行

情報氾濫時代に、どうすれば買ってもらえるのか?

ここ最近、買物で何かを選ぶ際に「あー面倒くさい」と思ったことはないだろうか?

と本書ははじまる。実は昨今、昔は買物を楽しめていたのに、今はなぜかストレスに感じてしまう人が、増加しているのだそうだ。「買物が面倒」と感じているのはあなただけではなく、近年の生活者全体の傾向だという。

本書はモノやサービスを売る業務に関わる方には、役立つ本である。顧客の多くは、すでに「買物が面倒」と感じ始めているからだ。なぜそのようなことが起こっているのか。買物を取り巻く環境の3つの変化であるという。

1つ目は、「情報爆発」とも呼べる、「情報の信じられない増加」。これはスマートフォンの普及を主とした、ネット環境の普及である。2つ目は、「買い方の多様化」である。インターネットの登場で、買い方が多様化したこと。3つ目は、生活者が「買物」にかけられる労力の低下だ。

確かに情弱を恐れるがあまり、安く賢く買おうという気持ちが強く、商品やサイトを調べすぎて疲弊してしまい、結局買わなかったという経験がないだろうか。本書では、値段より、スペックより、選ぶストレスがない仕組みが最重要と提唱。「買物欲はあるのに、買えない」というこの現象を解説し、どのように御社の商品が選ばれるのかを解説している。

「枠」を作って、買いやすいように誘導

本書の題名や装丁は軽やかだが、読み進めて行くと良書であることがすぐにおわかりになるだろう。ブランディングやマーケティングに関わる方や販売の最前線に立つ方々であれば、きっと抜本的な気づきが得られるのではないかと思う。一文一文に説得力があり、博報堂買物研究所よ恐るべし、という感想を持った。

詳しい内容はぜひ手にとって読んでいただきたいが、目次を紹介。

●プロローグ だから御社は選ばれない  「いいモノ」なのに売れないワケ
■序章   かつて買物に「幸せ」はあった
■第1部 【分析編】なぜ買物は幸せではなくなったのか
■第1章  買い物が幸せではなくなった、3つの理由
■第2章  選べない買物の悲劇
■第3章  勃興する買物新スタイル「枠内の攻略」
◆第2部 【解決編】選べない時代の新しい売り方
◆第4章  枠づくり戦略とは何か?
◆第5章  選ばれる「枠」のつくり方

このようになっている。なかでも興味深かったのは、「枠」という考え方である。

情報とモノの氾濫に疲れた消費者は「あらかじめ自分に合いそうなモノが絞り込まれた範囲」から、商品を選ぶようになるという。この絞り込まれた範囲が「枠」であり、膨大な情報と商品の中から自分に合いそうな商品を効率的に見つけるための「絞り込み装置」なのだ。

情報がありすぎる現代人に刺さる、売れる仕組みづくりのノウハウがとにかく満載である。詳しくは本書に譲るが、非常に今日的なマーケティングテーマを取り扱っている本なので、ぜひ一読をお薦めしたい。

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