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ブランディングの常識に挑戦した22の法則

CATEGORY : ブランディングを本に学ぶ

UPDATE : 2019.08.11

文責 : 山田 歩

この記事のポイント

ブランディングの常識に問題提起した挑戦の書

アンチテーゼの先にある正攻法が学べる


『ブランディング22の法則』
アル・ライズ/ローラ・ライズ共著
東急エージェンシー(1999年10月20日発行)

ブランディングの常識に、異を唱えた挑戦の書

本書は、題名こそ「ブランディング22の法則」となっているが、一般的な意味での法則を取り上げたものではないところに注意して読む必要がある。

著者のアル・ライズとローラ・ライズの『ブランドは広告でつくれない』も、従来ブランド構築で重要とされていた「広告」に対して、「広告ではなく精細なPR戦略がベースになければならない」という主張で話題となった本だが、本書も同様。これまでのブランディングにおいて常識とされたことへのアンチテーゼを掲げている。なお、著者が異議を唱えている「これまでの常識」とは以下のようなものである。

1.よい商品の競争に勝つ(品質・機能至上主義)
2.売上は一定のパイにシェアを掛けて決まる(市場占有度的発想)
3.ブランド拡張がブランドの成長を生む(拡張主義)
4.ライバルのヒット商品を真似しないと遅れを取る(物真似症候群)
5.短期の売上増大が長期的成長を損なうことはない(近視眼的発想)

これらの常識が、いかにブランドを傷つけているかをまとめたのが、22の法則なのだ。

1999年の発行当時は奇をてらった法則だというレビューもあったが、今では当たり前となっているものが多いことに驚かされる。監訳者もその慧眼について言及しているが、「もし一番手になれなかったら、自分だけのカテゴリーを作りなさい」という主張は、自分たちでなければ作れない独自性を築くという、今日ではブランディングの正攻法のひとつになっている。

逆転の発想、アンチテーゼの先にある正攻法

本書に並ぶ22の法則は、まさに正鵠を射るものが多いので、ぜひ一読をおすすめしたい。問題提起、アントテーゼの先のまさに正攻法ともいえる法則の数々を読むと、ブランディングの世界はまさに日進月歩であり、その進化の過程を知ることができるのも本書の見どころだろう。

たとえば、第13章「企業の法則」という部分を抜粋すると、「ブランドはブランドであり、企業は企業である。両者の間には大きな違いがある。」と述べ、ほとんどの場合、「ブランド名を企業名より重視すべきである」と言及している。消費者はブランドを買うのであって、企業を買うわけではないとのこと。今となっては常識かもしれないが、以前のビジネスの世界は違った――特に日本では、確かに企業名を全面に押し出す商品は多かった。

「ブランディング22の法則」と聞くとブランディングの王道の法則が学べるように感じるかもしれないが、本書は中上級者こそ本棚において置きたい本ではないかと感じた。ブランディングに関する発想が硬直化したときや疑問を感じたときなどに、本書は大きな気づきを与えてくれる可能性が高いのではないだろうかと思う。

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