コアコンピタンスとは、企業やブランドが位置する市場において競争優位性となる要素のこと。
顧客に対して、他社には提供できないような利益もたらすことのできる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体を指す。
そして、下記3つの能力をすべて有するものがコアコンピタンスにふさわしいとされている。
(1)顧客に何らかの利益を感じてもらえる能力
(2)競合に真似されにくい能力
(3)複数商品や他の市場に汎用できる能力
では、具体的にどのような能力がコアコンピタンスになり得るのか。実際の成功事例を見てみよう。
世界中の自動車メーカーが直面した問題を
技術力で解決し、他製品に汎用して成功
コアコンピタンスの事例として特に有名なのが、本田技研工業(HONDA)のエンジン技術である。
1960年代半ば、日本やアメリカでは自動車の排気ガスによる大気汚染の問題が深刻化しはじめていた。
そして、1970年に大気浄化法改正法が生まれ、厳しい基準をクリアした自動車しか販売を許可されなくなる。
世界中の自動車メーカーがこの法案によって自動車を販売できなくなると主張するなか、水面下でこの好機を狙っていたのが日本のHONDAであった。
HONDAは1966年に大気汚染対策の専門研究室を設立し、1968年以降、主力市場だったF1への参戦もやめて研究所の全リソースを大気ガス研究に注ぎ込んでいた。
そして、1970年に訪れた法改正。創業者の本田宗一郎は、最後発メーカーであるHONDAが他社を追い越すチャンスと捉え、圧倒的なスピードと情熱で新技術の開発にすべてを捧げた。
こうして1971年〜1972年にかけて誕生したのが、低公害技術を駆使した新型エンジン「CVCC(Compound Vortex Controlled Combustion)」。
このエンジンは世界で一番早くアメリカ環境保護局の認定を取得し、どこよりも最初に厳しい基準をクリアしたメーカーとして、全世界中にその名を轟かせることになる。
さらに、このエンジン技術を芝刈り機や除雪機、オートバイなどあらゆる製品に応用させることによって、様々な市場でHONDAの技術力が一目置かれるようになる。
こうしてHONDAのコアコンピタスは確固たるものとなり、最後発というブランドイメージから、技術力のHONDAという新しいイメージへと跳躍することに成功したのだ。