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サーカスから動物ショーを消す勇気
【ブルーオーシャン戦略の成功事例】

CATEGORY : ブランディング成功事例

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UPDATE : 2018.12.03

文責 : 松山響

この記事のポイント

シルク・ドゥ・ソレイユ:動物ショーや花形パフォーマーを辞め芸術性を高めて新市場を開拓

ブルーオーシャン戦略とは、競合のいない新しい市場を創造し、高付加価値商品・サービスを低コストで提供することで、利潤の最大化を実現する戦略のこと。

既存の競争が激しいレッド・オーシャンで商品・サービスを提供するのではなく、いかに競合がいない未開拓の市場=ブルー・オーシャンを発掘するかがこの戦略の鍵である。

動物ショーや花形パフォーマーの代わりに
芸術性を高めて新市場を開拓

シルク・ドゥ・ソレイユはブルーオーシャン戦略とお手本とされている。彼らは、当時のサーカス業界における競争要因を分析し、増やすもの・減らすもの、付け加えるもの・取り除くものを整理したことで、競争のないブルーオーシャンを創造したと言われている。

上記の手法は「アクション・マトリクス」という、ブルーオーシャン戦略における基本的なフレームワークであり、付加価値の増大と低コスト化の双方を実現することができる。

シルク・ドゥ・ソレイユのアクション・マトリクス(一例)

■増やすもの
美しくロマンティックなテント

■減らすもの
笑いや喜劇
危険性

■付け加えるもの
テーマ性
洗練されたエレガントな環境
知的な洗練性
豊かな芸術性

■取り除くもの
スターパフォーマー
動物ショー
館内のグッズ販売
隣接する舞台での同時ショー

この画期的なエンターテイメントショー劇団が登場するまで、サーカス市場は飽和状態で競合同士のショー変わり映えがなく、差別化のために有名なパフォーマーやライオン使いを引き抜いてくるため、ショーの中身は変わらないのにコストばかりが膨らんでいた。

それに対し、シルク・ドゥ・ソレイユは、スターパフォーマーに対する観客の需要が高くないことを見抜き、世間の反発が強くコストもかかる動物ショーをやめ、グッズ販売や複数の舞台での同時ショーなどの無駄もなくした。

一方、サーカスの普遍的な魅力であるテントや道化師、古典的パフォーマンスは残しながら、知的で美しく、芸術性の高いパフォーマンスへと昇華させ、テントも世界観の統一や、観客の居心地の良さを重視した。

こうした取り組みによって、誰もが見たことのない新しいサーカスが誕生し、サーカスファンとこれまでサーカスに興味のなかった層の両方を一気に獲得した。ブルーオーシャンが生まれた瞬間である。

シルク・ドゥ・ソレイユの戦略が優れていた点は、ただ高い付加価値を生み出すだけでなく、従来のサーカス事業に比べてコストカットも実現しているところ。それが、彼らが彗星のごとく登場し、瞬く間に業界トップを勝ち得た要因である。

企業(売り手)側と買い手、双方にとっての価値を飛躍的に高めることが、ブルーオーシャン市場を急速に形成するためには欠かせないのだ。

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