ブルーオーシャン戦略とは、競合のいない新しい市場を創造し、高付加価値商品・サービスを低コストで提供することで、利潤の最大化を実現する戦略のこと。
既存の競争が激しいレッド・オーシャンで商品・サービスを提供するのではなく、いかに競合がいない未開拓の市場=ブルー・オーシャンを発掘するかがこの戦略の鍵である
ブルーオーシャン戦略を実際に企画開発に活用して成功したのが任天堂のWiiだ。
当時のゲーム業界はソニーのプレイステーション3やマイクロソフトのXbox360などが台頭し、高機能化やゲーム性の高度化、リアリティの追求が進んでいた。任天堂のゲームキューブも映像の美しさやゲーム性を追い求めており、競合同士が同じ方向性を目指すことで市場はレッドオーシャン化していたのだ。
そこで任天堂の開発チームはブルーオーシャン戦略のフレームワークを用いて、ゲームをやらない非顧客層の分析などを行う。こうして導き出されたのが、従来のゲームファンではなく、ふだんゲームで遊ばない大人や小さい子どもを狙った戦略だ。
彼らは付加価値と低コストを両立するためのアクションマトリクスを作成。従来のゲームで付加価値とされていたリアルな映像や複雑な機能は取り除き、その代わりに簡単な操作性や物理的なゲーム性を追求した。
そして、ゴルフやテニスなどの動きを再現できる「Wiiリモコン」を加えたことで、直感的でカジュアルに遊べるゲーム体験を生み出した。
Wiiは小さい子どものいるファミリー層やゲームで遊ばないカップルや夫婦などの間でたちまち話題となり、競合のいない新しい市場を開拓することに成功したのだ。
Wiiの事例が真に優れているところは、いらないものを取り除くことでコストを抑えた点だろう。
映像美や操作性などを追求した高性能なゲーム機は、製造コストが高いため、ゲーム機だけで利益を確保するのは難しい。事実、ソニーやマイクロソフトも利益はソフトに依存していた。
それに対し、Wiiのゲーム体験に高度な機能や技術は必要ないため、製造原価が抑えられ、ゲーム機本体だけでも利益が出せたという。
ブルーオーシャン戦略においては、必ずしも最高品質や最高技術が必要になるとは限らず、むしろ新しい価値体験を生み出すアイデアが必要不可欠であることを、任天堂Wiiの成功事例は示してくれているのだ。