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本当に洗濯したいのは汚れよりもニオイだった【コンシューマーインサイトの成功事例(2)】

CATEGORY : ブランディング成功事例

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UPDATE : 2018.12.17

文責 : 松山響

この記事のポイント

ライオン:衣類を洗濯機に入れる基準は、汚れではなくにおいであると突き止めて成功

コンシューマーインサイトとは、消費者の行動や態度の背景にある意識を深く洞察すること。

行動に結びつく内面心理を深掘りしたり、行動や購買に結びつくブランドと生活者の共通点や、ライフスタイルなど目に見えないものを解釈することで、新しいインサイトを発掘することを目的としている。

アンケートなどで消費者自身の言葉から出てくるニーズは、すでに表面化されたものであり競合他社も持っている情報の可能性が高い。

一方、コンシューマーインサイトは消費者も言葉にできないような無意識的・潜在的なニーズを発見することにつながるため、新しい製品・サービスの開発や市場の開拓に有利となるのだ。

ライオン:衣類を洗濯機に入れる基準は、
汚れではなくにおいであると突き止めて成功

ライオンはコンシューマーインサイトを突いた商品開発を得意とする企業。歯磨きや洗剤、石鹸、医薬品などの分野でヒット商品を生み出し続けてきた。

2010年に発売した液体洗剤「ナノックス」もその一つ。コンシューマーインサイトを発掘したことで大成功を収めた商品だ。

開発当時、洗剤や洗濯機の市場は成熟期に入っており、各社の主な訴求ポイントは「洗浄力」。洗剤でいえば、花王のアタックは「驚きの白さ」をアピールし、ライオンのトップも「つねに最高の洗浄力」をアピールしていた。

もはや洗浄力が当たり前の時代に、何か新しい訴求ポイントはないのか。同社は商品開発に向けて、まずは国外の消費動向も含めた市場調査を行う。

すると、日本人がいかに洗濯好きであるかが明らかになる。東京在住の人で毎日する人の割合は、ベルリンの3倍、ソウルの4倍。

これほどこまめに洗っているなら、衣服はそこまで汚れていない状態で洗濯機に放り込まれているはずだ。もしかすると、彼らが洗浄したいのは汚れではなく、においではないか?汚れを見つけて洗濯機に入れるのではなく、においで判断しているのでは?

この仮説のもと、洗濯にこだわる主婦を定期的に集めてグループインタビューを実施したり、各家庭の洗濯機周辺の写真を収集して潜在ニーズを明らかにしていく。

こうして浮かび上がったコンシューマーインサイトが、「におい落とし」と「コンパクト化」の二つ。

新商品ナノックスは、目に見えない汚れ=においまで落とすという打ち出しと、従来より小さい印象を与えるキューブ型のパッケージで、半年間で1400万個を売り上げ、売上高は前年比1.6倍に到達する。

周知のとおり、ナノックスは今や潜在市場でアタックやトップに並ぶ代表的な商品となるまでにヒットしたのだ。

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