優れた競合他社を徹底調査し、在庫量の少なさに着目
1970年代、「米ゼロックス」は全米のコピー機市場で80%のシェアを誇っていた。まさに、独占状態であったと言える。
ところが、日本の競合企業の製品が躍進したことで、1970年代後半に入ると、そのシェアは次第に劣勢になっていく。そして1980年代に入る頃にはそのシェアは10%台にまで落ち込み、米ゼロックスはとうとう赤字経営に転落した。
米ゼロックスに勤めていたロバート・C・キャンプは、会社が窮地に追い込まれた局面で、日本の競合企業の経営状態に目を向けて徹底的に調査を行った。自社との違いを分析して改善しようと試みたのだ。
そして、日本の経営状態が良好な企業は「在庫量」が常に少ないということに着目し、自社の在庫量の削減が不可欠であると考えた。
在庫量を削減する最も効率的な方法を他業種から学ぶ
ただ、在庫量削減の手本にしたのは競合他社ではない。
米ゼロックスが「ベストプラクティス」に掲げたのは、アウトドア用品メーカーである「L.L.ビーン」の倉庫内業務だった。社内の部品抽出業務を効率化するための最も優れたヒントが、そこにはあったのだ。
さらに、流通業界の「アメリカン・エキスプレス」の請求回収業務を参考に、自社の請求業務の改革も行った。
当初は限られた部門に留められていたこの試みは、次第に他部門へも広げられた。そして、最終的にこのプロセスは全社的な取り組みとなる。
その結果、ゼロックスは大幅な在庫量の削減、請求業務の効率化に成功。これが業績の回復に繋がったのだ。
米ゼロックスの経営改革が成功した大きな要因には、業種を超えて「ベストプラクティス」を探し出した点が挙げられる。業界内の優良企業だけを対象にしていたならば、成し得なかったことであろう。
成功した手法を世の中に公開し、パイオニア的存在に
その後、米ゼロックスはアメリカの優れた経営システムを有する企業に与えられる「マルコム・ボルドリッジ賞」を受賞するまでになった。
さらに、同社はこの経営手法と結果を惜しむことなく世の中に公開。
ベンチマーキングのパイオニア的存在として、世界中の企業への普及に貢献したことでも知られている。