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競合のいない市場をつくる「ブルー・オーシャン戦略」とは?

CATEGORY : ブランディング用語集

UPDATE : 2020.02.02

文責 : SINCE.編集部

「ブルー・オーシャン戦略」とは、競合のいない新しい市場を創造し、高付加価値商品・サービスを低コストで提供することで、利潤の最大化を実現する戦略のこと。

フランスの欧州経営大学院(INSEAD)の教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュが2005年に発表した戦略。彼らは、価格や性能、サービスの差別化などで激しい戦いを強いられる、既存市場をレッド・オーシャン(赤い海)と定義し、逆に未開拓で競争のない市場をブルー・オーシャン(青い海)と定義した。

既存の競争が激しいレッド・オーシャンで商品・サービスを提供するのではなく、ブルー・オーシャンである新しい市場に、低コストで高付加価値である商品・サービスを提供するこの戦略。このように、新しい価値市場を創造する考え方を「バリュー・イノベーション(価値革新)」と名付け、価値革新によって市場の境界線を引き直すことが大切であると彼らは述べている。

差別化戦略にも近いが、「新市場の創造」に軸足を置いている点が異なる。競争を挑むのではなく、競争のない市場を定義することがこの戦略では重要とされる。

ブルー・オーシャン戦略には、戦略を立案・実行するためのヒントとなるいくつかのフレームワークがある。ブルー・オーシャンを見つけるためにはどんな考え方が有用なのか。代表的なフレームワークを紹介しよう。

アクション・マトリクス

競合のいない新しい市場を創造する「ブルーオーシャン戦略」における重要なフレームワークの1つ。

アクション・マトリクスはブルーオーシャン市場を創造するための具体的なフレームワークだ。

現状の競争要因に対して、「取り除く」「増やす」「減らす」「付け加える」という4つのアクションを検証し、自社がどのように変化すればブルーオーシャンを創造できるかを整理する。

付加価値を「増やす」または「付け加える」場合は通常コストがかかる。コストカットをする場合は、何かしらの付加価値を「減らす」または「取り除く」必要もある。こうしたジレンマを解消し、何で勝負するのかを決める際にこのフレームワークは有効だ。

戦略キャンバス

戦略キャンバスでは、対象となる事業の競争要因を横軸に並べ、ぞれぞれの要因における相対的価値の度合いを縦軸で表し、自社と他社の取り組みを比較する。

自社のグラフの折れ線が他社と一致している場合は、他社と強みや弱みが似ている可能性が高い。他の競合他社も同じようなグラフの形をしている場合、その市場は競争が激化したレッドオーシャンの状態だと言える。

一方、自社のグラフの折れ線が他社と異なる場合は、新たな市場を創造できる可能性が高い。あるいは、他社と同じようなグラフの形をしていた場合、そこから意図的にグラフの形を変えることで、ブルーオーシャンを見出すこともできる。

意図的に変えたグラフの形が自社の強みや理念にあっているか、将来性や収益性はどうか、経営資源や外的要因から実現可能なのかなど、様々な観点から検証して戦略を組み立てていく必要があるが、その第一歩となる分析が戦略キャンバスだといえる。

4つのハードル

競合のいない新しい市場を創造する「ブルーオーシャン戦略」において、戦略を実行に移す際に障壁となる4つのハードルのこと。

企業がアイデアを実現させるには様々な壁を乗り越える必要があるが、特にブルーオーシャン戦略においては現状からの著しい離脱や改革を伴うことが多いため、組織からの抵抗は避けられない場合が多い。

代表的な4つのハードルとは下記のことを指す。

・意識のハードル
戦略変更の目的とゴール、その戦略の重要性を従業員が理解し、共通認識を持つ必要がある。現状に執着している企業ほど、従業員の意識を変えるのは難しい。

・資源のハードル
大幅な戦略の変更は、より多くの先行投資と経営資源が必要となる可能性が高い。

・士気のハードル
ブルーオーシャンへの移行は、従業員やキープレイヤーのモチベーションの低下を引き起こすリスクもある。彼らをいかにうまくモチベートするかが成功の鍵を握る。

・政治的なハードル
戦略が革新的であるほど、既得権益を守ろうとする保守層の抵抗に合い、計画が頓挫する可能性も。有力者に立ち向かうには、より強力な有力者を味方につける必要がある。

6つのパス

これまでにない新しい価値を生み出すためには、従来とは異なる視点で商品・サービスを検討する必要がある。そのフレームワークが「6つのパス」であり、6つの視点におけるブルーオーシャン流の考え方が提唱されている。

■業界
レッドオーシャン:業界内のライバルに集中する
ブルーオーシャン:代わりの業界や代替品を探す
(例)メガネ→コンタクトレンズ、メガネ→視力トレーニング

■戦略グループ
レッドオーシャン:戦略グループ内の競争のポジションに集中する
ブルーオーシャン:業界内の戦略グループを幅広く見る
(例)高級車→ファミリーカー、高級車→軽自動車

■買い手グループ
レッドオーシャン:買い手グループをよりよく扱うことに集中する
ブルーオーシャン:買い手グループを再定義する
(例)医師、医療従事者→患者

■提供する製品およびサービスの範囲
レッドオーシャン:業界の境界内で、製品およびサービスの提供物の価値を最大化させることに集中する
ブルーオーシャン:相補的な製品およびサービスの提供をする
(例)ヤカン→フィルター付きヤカン

■機能感性志向
レッドオーシャン:業界の機能感性志向の中で、価格機能を向上させることに集中する
ブルーオーシャン:業界の機能感性志向を考え直す
(例)機能性に優れた時計→ファッション性に優れた時計

■時間
レッドオーシャン:外部の動向にあわせて適合することに集中する
ブルーオーシャン:時間を掛けて外部の動向の形成に参加する
(例)音楽購入→無料ダウンロード

新たな市場を開拓するためには、新しい打ち出しが必要となる。その大前提として、企業側が既成概念や常識にとらわれない発想を試みることの大切さを、このフレームワークは教えてくれる。

買い手の効用マップ

買い手の効用マップとは、提供する商品・サービスを様々な観点から検証し、改善点や差別化できる要素を探るフレームワーク。商品・サービスにおける不備や漏れ、あるいはもう少し手間暇を費やせば格段に利便性が良くなるようなボトルネックを探していく。効用マップは6×6のマトリクスを作成して埋めていく。
 
縦軸に置くのは「効用を生み出す6つのテコ」。下記6項目が評価対象となる。

■顧客の生産性:時間短縮やアウトプット量に貢献可能か

■シンプルさ:単純明快か

■利便性:手間がかからず、便利か

■リスク:リスクを減らせられるか

■楽しさ・好ましいイメージ:楽しさは増しているか

■環境へのやさしさ:環境負担が少ないか

横軸に置くのは「購買経験6ステージ」。下記6項目を評価していく。

■購入:商品がすぐに見つかり、購入は簡単か

■納品:すぐに使えるか

■使用:誰でも使えるか

■併用:類似品と比較可能で、性能が優れているか

■保守管理:手入れが簡単・安価か

■廃棄:廃棄するときのコストは安いか

自社ブランドについて各マス目を検討しながら、どの部分が顧客にとってメリットで差別化が図れるのかを検討する。競合ブランドもプロットすることで、自社の立場がより鮮明に分析できるだろう。

3つの非顧客層

3つの非顧客層では、非顧客を分析して新たな顧客層を生み出すことを目的とする。

これまではターゲットとしてこなかった層が、どうしたら商品やサービスを利用してくれるのか。それを検討するため、非顧客を3つのグループに分類する。

■第1グループ
このグループは自社ブランドを利用してはいるものの、特に愛着はなく、新商品や安い代替品があれば簡単に他社にスイッチングしていく層。どうして代替品にスイッチするのかを分析する必要がある。

■第2グループ
商品やサービス、企業に対して否定的な印象を抱いている層。
その商品・サービスは利用しないと決めており、積極的に代用する商品・サービスを利用している。
ネガティブな感情を取り除くための施策を考える必要がある。

■第3グループ
その商品・サービスのみならず、競合他社や代替品も含めて利用しない層。
ターゲットから最も遠い位置にある一方で、この層にリーチできれば大きな市場拡大が望める。

非顧客層の調査は対象が広範囲に及び、資源や時間的コストもかかることが多いが、ブレイクスルーを狙うブルーオーシャン戦略にとっては非常に重要な作業だといえる。

ーーー

以上がブルー・オーシャン戦略を立案・実行する上で重要となるフレームワークだ。

消費者のニーズが多様化している現在、既存の商品・サービスにはない価値を生み出すことがビジネスでは求められている。その際に、大きな活路を見出すチャンスとなるのが、ブルー・オーシャン戦略の考え方だろう。不確実性が増している今こそ、自分たちの資源を最大限に活用し、コストを削減しながら新しい価値の創出を目指すことが、優れたマーケティング戦略であると考えられる。

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