アドガボシー・マーケティングとは、企業やブランドがすべての顧客に対して公平な情報を提供し、顧客にとって最高の利益を追い求めることで顧客ロイヤルティを高める手法。「徹底的な顧客第一主義」で強固な信頼関係を築き、長期的な利益を目指す戦略を指す。
「Zappos(ザッポス)」は、アメリカのラスベガスに本社を構える靴のインターネット通販会社。1999年の創業以来、独自の企業文化を築きながら急成長し、たった10年という短期間で総売上げが10億ドルに到達。今や、アメリカのビジネスマンでザッポスを知らない人はいないと言われるほどに注目される企業である。
ザッポスが展開してきたのは、顧客がインターネット通販で靴を購入する際のさまざまなハードルを取り除くサービスである。購入時の送料だけではなく返品も無料で受け付け、24時間365日対応のコンタクトセンターによる顧客サービスを提供。基本的に、注文の翌日には商品が購入者の手元に届くように手配した。
これらのサービスの一部は、今でこそ珍しいものではない。しかし、ザッポスが成長を遂げてきた時代は、まだまだインターネット通販の黎明期だった。その時代にあって、彼らの取り組みはインターネット通販の新常識を打ち立て、今日の通販サービスの在り方が確立されるきっかけとなったのだ。
しかし、ザッポスの提供するサービスはこれに留まらない。返品は365日以内であれば無料で何回でも受け付ける。顧客の足に合う可能性のある靴を1度に数足送り、詰まるところの試着サービスを行うこともある。また、自社に顧客が希望する商品の在庫がなければ、在庫がある他社サイトを紹介までしてしまうのだ。
サッポスのコンタクトセンターの対応には数多くの逸話が存在するが、あくまでも顧客を喜ばせるためなら何でもする社員の姿勢が、他では体験できない感動を呼ぶのだ。実際、ザッポスの社員は自分の会社について聞かれると「たまたま靴の販売業を営んでいるに過ぎないサービスカンパニーです」と答えるのだと言う。
ここまでの徹底した顧客サービスには、もちろんコストがかかる。しかし、ザッポスの新規顧客のうち43%は口コミで獲得した顧客であり、リピート率は75%を誇る。この数字が示すほどの「信頼」が獲得できれば、そのコストは一時的な損失でしかない。そこから得られる利益は、計り知れないのである。