『デジタル時代の基礎知識
ブランディング「顧客体験」で差がつく時代の新しいルール』
山口義宏 著
株式会社翔泳社/2018年3月15日発行
ブランド構築で、迷子になったときに読みたい本
「経営層からブランド構築の指令を受けたがやったことがない」
「マス広告などに巨額投資はできない」
「デジタル時代にアップデートされたメソッドを知りたい」
などなど、本書は実際にブランド構築を実行する人に向けて執筆されている。特に、マス広告のような巨額を投じなくてもブランド構築できること、そして題名にもあるようにデジタル時代に対応したブランド戦略や顧客体験について言及しているが特徴である。
この本の最初の良いところは、ほとんどの項目が見開き2ページで解説されている点。パラパラとページをめくっていくだけで初心者はもちろん、中・上級者でも各人のリテラシーに本書の知識を付加したり、自身のスキルチェックやおさらいに使える内容となっている。
著者は、ブランド戦略を「商品力・サービス力だけでは勝てない時代の新たな武器である」と定義している。
さて、この武器は下記のような方のニーズを満たす内容となっている。
1つでもあてはまる方はぜひ手にとっていただきたい。
□ブランド戦略を基礎から学びたい。
□デジタル時代のブランド戦略を知りたい。
□マス広告に頼らない手法を知りたい。
□これまでのブランド構築を見直したい。
□ブランド戦略の未来の変化を知りたい。
□ブランドのプロの思考を知りたい。
デジタルで進化するブランド戦略
本書で印象的だったのがCHAPTER3において言及された、「デジタル時代のブランディング」についてであった。
技術やモノのコモディティ化が進んだ現在は、モノだけで差別化することに限界があり、顧客体験全体をよくすることで差別化する必要がある。そのために、マスメディアだけではなくSNSなどを活用したネットでのブランディングの重要性が説かれている。
具体的には顧客体験の設計手法、レバレッジ戦略、デジタル化のメリットの活かし方などについて。その多くが見開きで紹介されているので、見やすく、また様々な気づきが得られるようになっているところも大きなポイントだ。
正しい事業戦略が、ブランド構築を成功させる
著者によると、経営者から「ブランド戦略で、本当に事業は成功するんですか?」とよく聞かれるという。我々も常日頃から、こういった質問を受けたり、また議論になることがあり、まさに正鵠をついた疑問でもある。
それに対し、山口氏は「事業戦略の失敗まではリカバリーできませんが、事業戦略成功の後押しはできますよ」と答えるそうだ。
つまり事業戦略が正しければ、ブランド戦略はしっかり機能するということ。
事業戦略そのものの可否も見極めようとする著者の矜持であると感じた。この回答こそ、ブランド戦略の専門家として、至極誠実な答えであると思う。