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マーケティングに効く心理学テクニック10選【ブランディング用語集まとめ】

CATEGORY : ブランディング用語集

UPDATE : 2019.06.12

文責 : SINCE.編集部

マーケティングを行ううえで、人がどう行動するのか、どうしてそのような行動をするのかを理解することは非常に大切なこと。どうすれば人の心が動き、行動が生まれるのかを理解することは、成果につながるマーケティングの大きな助けとなるだろう。

その意味でも、行動心理学の分野はマーケティングと密接な関係がある。実際、様々な研究成果がマーケティングの分野に応用・実践されているのである。今回はマーケティングに役立つ代表的な行動心理学の用語を紹介しよう。

■ツァイガルニク効果
完成されたものより、未完成のものや発展途上のものに興味が湧くという心理的効果のこと。旧ソビエト連邦の心理学者であったツァイガルニクが提唱した。

何かを達成しなくてはいけないというときに人は緊張状態となり、この緊張は課題が達成されると解消されて課題自体も忘れたりする。しかし、課題が途中で中断されると緊張状態が持続するため、課題を完了させたいという欲求が働く。

例えば、テレビドラマが盛り上がる場面でCMに入ったり、翌週に持ち越されたりすると、人はその結末が気になって視聴を続けてしまう。「この続きはWebで」「東京の新スポットとして話題沸騰中の〇〇とは?」といったコピーもツァイガルニク効果を狙った例と言える。

■ディドロ効果
何か新しいもの、自分の理想となるものを手に入れたとき、それにマッチするように身の回りのものを揃えようとする心理のこと。

8世紀フランスの思想家であるドゥニ・ディドロが、知人から高級ガウンをもらったことをきっかけに、家具などをガウンに合うような高級品に買い替えたというエッセイのエピソードが語源。

この「ディドロ効果」と、上位モデルを進める「アップセル」の手法を組み合わせると、顧客単価アップやリピーターの獲得が望める。

■バンドワゴン効果
ある商品・サービスに対して、大勢の人が支持すればするほど、「きっと良いものに違いない」という顧客心理が働き、さらに多くの人から支持される現象のこと。バンドワゴンとは、パレードなどの列を先導する楽隊車のこと。「行列のできる店」「売上NO.1」などは、この効果に基づくフレーズだと言える。

■スノッブ効果
他者の消費が増加するほど需要が減少していく現象のこと。人には「他人とは違うものが欲しい」「なかなか手に入らないものが欲しい」という心理欲求があり、それが働くと世間で流行っているものや、どこでも手に入るものに対する購買意欲がなくなる。地域や季節、数量などを限定する販売手法はスノッブ効果を狙ったものだと言える。

■ヴェブレン効果
価格が高まれば高まるほど、「他人に見せびらかしたい」という欲求(顕示性)が高まって需要が増加する現象のこと。商品そのものの機能や価値だけで消費行動が決まるとは限らず、高価格=高級品=希少といった心理現象も消費に大きく影響を及ぼすことを示している。

■ウィンザー効果
ある商品やサービスについて、その販売者や提供者から発信される情報よりも、第三者から間接的に伝わる情報のほうが、信頼性が高くなるという心理効果。ユーザーレビューや口コミ、いわゆる「ステマ」もこの効果を狙ったマーケティングの手法である。

語源はアーリーン・ロマノネスのミステリー小説『伯爵夫人はスパイ』に登場するウィンザー伯爵夫人のセリフ「第三者のお褒め言葉は、どんなときでも一番効き目があるのよ」に由来する。

■アンカリング効果
消費者が最初に印象付けられた価格や情報が、その後の購買判断に大きな影響を及ぼす効果のこと。

アンカーとは船の錨(いかり)のこと。錨を海におろすと、船はその場所から動ける範囲が限定される。このように、最初に提示した価格や情報(錨)に、消費者の判断(船の行動範囲)が紐づけられることをアンカリング効果と呼ぶ。消費者が対象となる商品やサービスに関する情報を知らないほど、アンカリング効果は有効になるとされている。

例えば「本日限定!ノートパソコン 通常150,000円→100,000円」という広告に対し、その商品のことを知らない消費者にとっては値引き前の価格がアンカリング効果として影響する。一方、商品の知識や相場を知っている消費者の場合、アンカリングの影響を受けることはない。こうした価格表示の場合は、通常価格の表示を不当に引き上げるような「二重価格表示」に注意しなくてはならない。

■フレーミング効果
同じ選択肢であっても、その表現方法によって意思決定が変わること。

フレーミングのフレームとは絵画の額縁に由来する。つまり、絵画と同じく対象のどこを切り取るのかによって、人が受ける印象は大きく変化することを意味している。

これは1981年に行動経済学者のダニエル・カーネマンと、心理学者のエイモス・トヴェルスキーが発表したもので、現在は主にマーケティング分野に応用されている。

フレーミング効果の有名な実験に「アジアの疾病問題」がある。

「アジアの疾病問題」では、複数の学生をターゲットに下記2つの問題を設け、それぞれどの選択肢を選ぶのかを調査した。

【問題1】
600人が死亡すると予想される特殊なアジア病の流行に備えて、2つの対策が提案されている。
対策Aを行うと、200人が助かる。
対策Bを行うと、1/3の確率で600人が助かるが2/3の確率で誰も助からない。

【問題2】
600人が死亡すると予想される特殊なアジア病の流行に備えて、2つの対策が提案されている。
対策Cを行うと400人が亡くなる。
対策Dを行うと、1/3の確率で誰も死なないが2/3の確率で600人全員が亡くなる。

上記の問題の解答結果は以下のようになった。

問題1に対する学生の回答は、対策Aが72%、対策Bが28%。

問題2に対する学生の回答は、対策Cが22%、対策Dが78%。

よく読むとわかるが、対策Aと対策Cの内容、そして対策Bと対策Dの内容はそれぞれ全く同じものである。にもかかわらず、学生の解答の比率は設問によって逆になった。なぜなら、問題1では「助かる」ことに焦点を当てており、問題2では「死ぬ」ことに焦点を当てているからだ。

人は通常、利益を得る場面では「リスクを避けて確実に手に入れること」を優先する傾向がある。

一方、損失を被る場面では「リスクを冒してでも最大限に回避すること」を優先する傾向がある。

問題1では、「助かる」という利益にフォーカスされたため、リスクを避ける選択肢が選ばれた。

問題2では、「死ぬ」という損失にフォーカスされたため、リスクを冒してでも損失を回避する選択が選ばれたのだ。

このように「利益を得ること」にフォーカスするフレーミングをポジティブフレーミングと言い、「損失をこうむること」にフォーカスするフレーミングをネガティブフレーミングと言う。

■ピグマリオン効果
人の成長は周囲の評価や扱い方に影響を受けるという前提のもと、「周囲がプラスの印象を抱くと、実際にプラスの方向へと結果が現れる」という心理学の定説のこと。

「ピグマリオン」とは、ギリシャ神話に登場する王の名前に由来する。彼は自分で作った彫刻の女性に恋をし、神に「彫刻を人間にしてほしい」と祈り続けた結果、その願いが叶い、その彫刻と結婚して幸せに暮らしたと言い伝えられている。つまり、「信じていることが現実化する」ということを意味している。

この効果は1964年、アメリカの教育心理学者R.ローゼンタールが行った実験によって実証されたものである。

彼は、ある小学校で「ハーバード式突発性学習能力予測テスト」と名付けたテストを実施しました。テストの内容は一般的な知能テストに過ぎなかったが、教師には今後の成績の向上を予測できる特殊なテストであると伝え、テストを受けた生徒の中から数名をランダムに抽出し、担任の教師に「この生徒は今後成績が伸びる」と伝えた。

すると、そこで選ばれた生徒とその他の生徒の成績の伸びを比較したところ、選ばれた生徒の方がより高い伸び率を示したという。

この実験によって、「人は周囲から期待をされると、期待をされない場合よりもより成果を出す」という結論が導かれた。

このメカニズムとして考えられるのは、教師は成績が伸びるはずだと思っている生徒の成績が思うように伸びないと、自分の教育方法に問題があるのでは考え、より良い教育方法を見直すようになる。そのために、生徒たちは手厚い指導を受けて成績がアップしたのではないかということ。

さらに、生徒たちも担任からの期待を感じることで、それに応えようと努力するようになり、実際に成績が向上したのではないかと考えられている。

■ベイビーフェイス効果
ベビーフェイス効果とは、人間が赤ちゃんに対して本能的に抱く親近感や安心感から、警戒心がなくなり好感を抱くハロー効果の一種である。

赤ちゃんに限らず、赤ちゃんの顔のような特徴を持っている人、すなわち童顔の人に対してもこのような効果が生まれ、親しみやすさや安心感を感じやすいという。

もともとはオーストラリアの動物行動学者、コンラート・ローレンツがm幼児性のある人や動物・キャラクターの特徴を「ベビースキーマ」と命名したことが始まり。

ベビーフェイス効果は主に商品・サービスの広告に活用されることが多く、消費者の不信感や敵対心を取り除くことを狙いとしている。なお、赤ちゃん、童顔のほかにも、笑顔でも同様の効果があり、また男性よりも女性のほうが効果が得られやすいため、一般に企業の広告には笑顔の女性が使われることが多い傾向にあるとされている。

■ホーソン効果
人から注目されることにより、その期待に応えたいという心理が働き、通常よりも良い結果を引き起こす現象のこと。

ホーソンとは、実験が行われたアメリカの工場の名前に由来する。この実験は、もともと他の目的で行われていたものであった。

ハーバード大学ビジネススクールのエルトン・メイヨ教授は、光の明るさが従業員の作業効率にどう影響するかを調査していた。すると、どんな明るさでも作業効率は向上し、逆に薄暗く手元が見えにくい状況でも作業効率は向上したのだ。

その原因を調べたところ、作業効率を向上させたのは現場にいた調査員の存在であったことがわかった。作業者は有名なハーバード大学の調査対象に選ばれた、その調査員から見られているという意識が働いたことで、モチベーションが高まって真剣に仕事に取り組み、結果的に生産性が向上したのである。

ホーソン効果は主にインナーブランディングや社内のモチベーションアップに生かすことができる。

たとえば、職場の従業員同士で素晴らしい働きをしたと思う人の名前を挙げて表彰する制度や、頑張っている従業員に会社からインセンティブがもらえる制度など、従業員一人ひとりが「自分は注目されている」という意識を植え付ける仕組みを作ることで、結果的に良い効果をもたらすとされる。

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